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サムスンのハーマン買収で「コネクテッドカー」競争激化?

日本勢はどう動く 「自然な流れと受けとめベンチマークする」
サムスンのハーマン買収で「コネクテッドカー」競争激化?

ハーマンの公式サイトより

 韓国サムスン電子は米自動車部品大手のハーマン・インターナショナル・インダストリーズを約80億ドル(8560億円)で買収する。ハーマンは車載用音響機器やカーナビメーカーのイメージが強いが、最近は外部と通信できる車「コネクテッドカー」事業に参入し、関連技術を持つ企業を相次いで買収。同分野で存在感を強めつつある。サムスンの巨大な資金力や技術を活用すれば、これまで以上に新領域の成長を加速できる。日本の車載機器メーカー各社も次世代車向けの投資を活発化しており競争は激しさを増しそうだ。

 「サムスン電子はハーマンにとって理想的なパートナーだ」。ハーマンのディネッシュ・パリワル最高経営責任者(CEO)は今回の傘下入りについてこう見解を示した。ハーマンが得意とする車載機器の開発のノウハウとサムスン電子のエレクトロニクス技術を融合し、コネクテッドカーなど次世代車載分野で競争力の高いシステムを開発するものみられる。

 ハーマンはカーオーディオやカーナビが主力製品で、自動車分野の売り上げ構成が全体の6割を占める。最近は同事業に加え今後成長が見込まれるコネクテッドカーや自動運転といった次世代車向け車載システム開発への投資を活発化。ベンチャーを相次いで買収している。

 中でも目立つのがソフトウエアやセキュリティー関連技術をもつ会社の買収で、2015年1月にはソフト会社の米レッドベンド・ソフトウェアを、今年6月にはサイバーセキュリティー関連技術を開発するイスラエルのタワーセックを手に入れた。

 特にハーマンは車のハッキング対策用の技術開発を重視しており、今年日本市場にも参入。車が外部と頻繁に通信するようになれば、第三者が車をのっとり不正操作するといった重大なリスクがあるからで、コネクテッドカーの普及に欠かせない。ハーマンでコネクテッドカー分野を統括するサール・ディックマン氏は「国内外の車メーカーと採用に向けて協議を進めている」と自信をみせる。

 コネクテッドカーなど次世代車載技術を巡っては、トヨタ自動車など完成車メーカーのほか、ハーマンの競合にあたるアルパインやクラリオンなど日本の車載機器メーカーも事業拡大を進めている。

 アルパインは日本IBMとの提携や中国IT大手のニューソフトとの合弁会社設立など他社と連携し、次世代車ビジネスを強化している。アルパインの梶原仁常務取締役は「コネクテッドカーをはじめ、次世代車向け車載システム事業を強化する上でIT企業など他社との連携は欠かせない」と強調する。

 「新領域を1社単独で切り開くのは困難。サムスンとハーマンが組むのは自然な流れと受けとめベンチマークする」。車載機器メーカー幹部は静観するが、ハーマンはサムスン電子が持つエレクトロニクス技術だけでなく、資金力も活用できるようになる。次世代車載分野を巡る勢力図が大きく変わる可能性がある。
(文=下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年11月16日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
サムスンは良い意味でも悪い意味でも注力、戦略分野への投資にメリハリが効いている。一時、全社がモバイル分野に大きく舵を切ったことで半導体部門は割を食った。自動車分野は期待する分野とはいえ、今回のディールは正直、どこまでサムソンにとってプラスとなるか見えずらい。発火問題や大統領問題などゴタゴタに対するエスケープの一つとうがってみてしまう。

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