ホンダ「NSX」フル稼働。人とロボットが協調し世界トップレベルの“単一仕様”に

米国工場、6000人の中から選ばれた熟練作業者80人が品質を担保

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回転式治具に載せた骨格
 【トーランス(米カリフォルニア州)=池田勝敏】ホンダのスーパーカー「NSX」の生産が軌道に乗った。NSX専用工場「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター」(PMC、米オハイオ州)で先月から日産8台、年産1500台のフル稼働状態に入った。好調な受注状況を受けて高品質を維持しながら生産ペースを上げる。その品質はロボットと人の協調が支える。

 骨格部品をはめた四角の治具が鉄棒をするようにぐるりと回っては止まり、またぐるりと回る―。PMCの溶接工程で随所に見られる回転式治具は、溶接アームが骨格部品を結合する際の溶接箇所にアクセスしやすくするための工夫だ。

 NSXの骨格は熱変形が課題となるアルミを多用している。溶接アームがアクセスしやすくなると、熱が1カ所に集中して変形してしまうようなことを防ぐことができる。PMCプロジェクトリーダーのアンディ・ストックトン氏は「ここで世界クラスのボディーの強度が生まれる」と話す。高精度な溶接が頑丈な骨格を実現する。

 回転式治具は骨格形状ができあがった後のシール工程にも導入している。溶接工程は完全自動化しているがシール工程は手作業だ。作業者が約100メートル分のシーラーを塗布する。回転式治具はロボット溶接と同様に人手もアクセスしやすくでき、作業精度が上がり作業負担の軽減にもなる。

 PMCでは人とロボットの作業が混在する。溶接工程のセルの中ではロボットが手際よく骨格部品を溶接する一方で、セルとセルの間では作業者が目視で溶接の精度をじっくり検証している。

 反復するような作業はロボットが担い、検証やシール、部品の組み付けなどの技能を要する工程は人手が担う。ホンダの同州にある量産車工場で働いていた6000人の中から選ばれた熟練作業者80人の技能も高い品質を支える。

 NSXは05年に生産を終了したが全面改良して4月に生産を開始し約10年ぶりに復活した。米国を皮切りに10月末までに326台を出荷し、仕向け地は米国含めカナダ、日本、ドイツ、英国、中国など12カ国。

 塗装の仕上がりや耐久性の高さなど地域によって顧客の嗜好(しこう)は異なるが「世界のどこでもトップレベルの品質になるように仕様を一つにまとめた」とマイク・フィッシャー工場長は話す。

日刊工業新聞2016年11月15日

COMMENT

池田勝敏
編集局経済部
編集委員

日本向けの生産は17年1月に、納車は2月から始める。来年から米国の購入者を対象にした工場見学ツアーを計画中だ。「車づくりの経験をシェアしたい」(ストックン氏)と言い、人とロボットが協調した品質へのこだわりを顧客に理解してもらいたい考えだ。

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