トランプ政権で金融規制強化の流れは変わるか

「リスクリテンション規制」に猶予?法改正には不透明な部分も

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9月15日の「Economic Club of New York」でのスピーチ
 ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に決まり、2008年のリーマン危機後、オバマ政権が進めてきた金融規制強化の流れはどうなるのか。トランプ氏は厳格な規制導入に否定的な発言をしていた。米金融機関や邦銀の間でも、近く発効する「リスクリテンション規制」に猶予が与えられると期待している。

 米国の金融規制強化の柱は10年に成立したドッド・フランク法(金融規制改革法)。ドッド・フランク法は米国で事業をする外国銀行も適用対象だ。トランプ氏は選挙期間中に「新たな規制を一時停止する」と発言している。

 アナリストなどによると、商業用不動産ローンや他の資産を裏付けとする証券化の主体にリスクの一部継続保有を義務付ける規制の緩和についても、目標に含まれる可能性がある。

 リスク保有を義務付けるリスクリテンション規制は、オフィスビルやホテル、他の不動産の資金調達コスト上昇につながりかねない。不動産業でのし上がってきたトランプ氏が見直しに動く十分な動機がある。

 過度な金融規制の再考を訴えてきた日本の金融当局にとって、トランプ政権は「組みやすい相手」になるかもしれない。との声もある。日本の大手金融機関は海外戦略で米国に重心を置いており、新政権で規制強化の流れが変われば、米国での日本の金融機関のビジネスの可能性が広がる。

 米下院金融委員会のヘンサーリング委員長は、以前のインタビューで、「ドッド・フランク法は失敗だった。それもぶざまな失敗だった。お払い箱にする必要がある」との考を示している。

 一方でトランプ氏は商業銀行と証券の厳格な分離を求めていたグラス・スティーガル法(1999年撤廃)の復活を支持している。もし復活が実現すると銀行、証券などの横断的な業務をしにくくなる。

 現状、金融規制強化にどこまで歯止めをかけるのかは不透明だ。また法律を見直すことになっても連邦議会が壁になりそう。次期与党になる共和党は上下両院の多数派を握ったものの、上院では51議席どまり。議事妨害を阻止できる安定多数の60議席には達していない。野党になる民主党が徹底抗戦すれば法改正は難しくなる。

 トランプ政権はあらゆる業界の規制負担軽減に大きな関心を持っており、その一つに銀行があるのは間違いない。ただ、リスクリテンション規制緩和の優先順位がどの程度などかははっきりしない。日本のメガバンクなども当面、情報収集に追われることになる。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

安東泰志
ニューホライズンキャピタル
会長

リスク・リテンション規制の緩和は、少し頭打ち感があった不動産取引を再活性化するかもしれない。トレーディング業務の規制も緩和されれば銀行セクターにとっては短期的にはメリットがあろう。しかし商業銀行は社会的インフラであり、ナローバンキング業務以外の業務に損益ぐ左右されるのは社会的には賛否が分かれよう。実際、トランプ氏も共和党も、銀証分離を定めたグラススティーガル法の復活も提言しているが、それは逆に商業銀行の業務範囲を規制する動きと言える。

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