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グローバル企業へ回帰する日本IBM。次のトップは日本人に回帰?

「私の時代は日本化路線を喧伝していただけ」(椎名元社長)
 創業79年を迎える日本IBM。外資ながらも日本の企業社会に根ざした風土が持ち味だが、ここ数年は逆にグローバル企業への回帰を強めている。かつて日本人が大勢を占めていた取締役会のメンバーもいまやポール与那嶺社長(59)を含め計11人のうち7人が外国籍だ。経営のガバナンス(統治)は社内力学だけでなく、米IBMからの信任や大手顧客とのつながりなど、複雑な連立方程式を解かなければ成り立たない。

 グローバル企業への回帰で大なたを振るったのは前社長のマーティン・イェッター氏(57)。15年に米本社の上席副社長へと招聘(しょうへい)され、経営を与那嶺社長にバトンタッチしたが、イェッター氏は取締役会長として今も日本への影響力を持っており、現在も日本IBMは改革路線のまっただ中にある。

 与那嶺社長は米国籍の日系三世。英語も日本語もネーティブであり、しかも米ホノルル市長特別顧問や日立コンサルティング社長など異色の経歴を持つ。英語力を含め豊富な経験は米本社からも高く評価を得ている。

 与那嶺体制は2017年1月に3年目に入る。「我々は子会社ではあるが、なすべき役割は多く、経営という意味では非常に手間が掛かる」と責務の重さを語る。

17年には60歳という節目にあたるが、トップとして脂がのってきたところであり、安定政権として2―3年は手堅く続きそう。逆にいえばこの間、次期トップを育成し、次代への道筋を示すことが経営課題となっている。

 次期トップを日本人に絞ると、コンサルタント出身で、成長戦略担当の松永達也常務執行役員(53)や、IBMのDNA(遺伝子)でもあるハードウエア担当の武藤和博専務執行役員(53)の名があがる。年次を一つ上げると、新規事業の立ち上げで実績を持ち、ワトソン事業を率いる吉崎敏文執行役員(54)や、業界別営業部門を束ねる福地敏行取締役専務執行役員(54)も見逃せない。

 
日刊工業新聞2016年11月10日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
外国籍役員・幹部が増えたことの是非を、以前に椎名武雄氏(現、日本IBM相談役)に尋ねたところ、「外からはいろいろ言われるが、もともとが親子であり、大きな顔をしていられるのも親のおかげだ」と明言。「私の時代は外資系は毛嫌いされたから、日本化路線を喧伝していただけ」とも。時代は変わり、客先が求めるのはIBMがグローバルで培ってきた力だ。日本IBMのグローバル回帰の背景には、変わらざるを得なかったのは日本企業の変化も見え隠れする。前社長のイエッター氏はドイツ人、与那嶺社長は米国籍の日系3世。次のトップは日本人である必然性はないが、そうであることを期待したい。  (日刊工業新聞第一産業部・斎藤実)

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