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東大のエグゼクティブ育成講座、修了生400人超す。メンバーの顔ぶれは?

6割が金融や製造業の大企業、3割が官公庁。新プログラムも検討
 2008年10月に始まった東京大学の社会人教育「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)」の修了生が400人を超える見通しになった。中央官庁や大企業の幹部候補生が、現代社会、国際社会の多様な知識や課題設定、解決法を身に付けるのに金土の全日、1期半年間で受講料約570万円は高額ではないと浸透しつつある。東大は講師も受講生も日本・他国半々のプログラムの検討を始めた。

 東大EMPの定員は約25人。16年度上期までの修了生は360人ほどであり、2017年4月以降に400人を超えることになる。

 講義は「教養・知恵」が8割でうち自然科学が半分強、人文社会科学が半分弱。マネジメントなど、実践的なものが一部ある。1回を座学60分と討論45分で構成。講師は学内教員や各国大使ら1期で約100人が担当する。

 山田興一総長室顧問は、「日本社会の指導層に不足するのは科学技術のリテラシー(活用能力)。そのため『最先端の科学技術で世の中はどう変わりつつあるか』を実感させ、刺激する。

 その上で経済や哲学の議論に進む」とプログラムの狙いを説明する。また脳科学や数学、哲学の専門家が同席するなど、1回当たりの講義の質を重視する。

 受講生内訳は、6割が金融や製造業の大企業派遣、3割が官公庁系の派遣だ。修了生らによる東大大学院生向け講義では、内閣官房、JT、リクルートホールディングスなどの名が見られる。毎年、議会審議を通して予算確保する自治体もある。

 東大も組織的に農学系、経済学系の2教員を参加させた。欠席はほぼない。修了後の研究会実施や論文誌作成なども出てきた。

 また、東大は4年ほど前に中国の官僚教育として、2週間向けの集中版を手がけているが、同様の希望が海外や企業から寄せられているという。そのため、いずれ欧米の著名大学と組んだプログラムを始めることも検討している。
(文=山本佳世子)
日刊工業新聞2016年11月10日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
受講生の数や参加企業は置いといて、リーダーは教わったことを実行しているのか、その後のフォローアップは知りたいところ。組織とリーダー個人の利害は必ずしも一致しないことが多い中で、講座自体はどのような人材を作ろうとしているのだろうか。その定義が曖昧だと派遣する企業も個人も自己満足で終わってしまう。「孫正義」は教育して生まれるものではない。

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