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「米国第一主義」に「ジャパン・ファースト」で成長戦略を見直しを

トランプは「ビジネス寄り」だが本当の実行性はこれから
「米国第一主義」に「ジャパン・ファースト」で成長戦略を見直しを

17日の安倍・トランプ会談で何が話し合われるか

 米国でトランプ新大統領が誕生することが決まった。マーケットはクリントン勝利を予想していたため、トランプ勝利確定で9日の日経平均株価は大きく下げた。しかし、米国東部時間の9日深夜、トランプ氏が米国民に和解を求め、別人のような穏やかな態度で勝利宣言演説を行うと、翌日の米国株式相場に安堵(あんど)感が広がり、大幅上昇に転じた。

 マーケットでは取りあえず新大統領が決定したことで、大きな不確定要素が取り除かれた。しかし、条件反射のような相場環境は要注意である。

 トランプ陣営は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」のためにはあらゆる手段を尽くすだろうし、米国議会も上下院で共和党優勢となり、8年間のオバマ政権の政策の巻き戻しが起こると予想される。

 「米国第一主義」とは、端的に言えば、米国の利益を米国本土に持ち帰ること、米国が経済金融・軍事において優位性を確保することを意味する。米国の国益優先主義が、日本や中国、そしてアジアの安全保障、通商貿易通貨体制全体に影響を与えるだろう。

 いずれにせよ、米国民は変化を強く望み、新大統領はその期待に応え、変化を速く起こそうとする。だが、一体どのような変化なのかはまだ見えていない。2017年は、トランプ陣営に的確な助言をできる人材がいない場合、権力の乱用、あるいは権力の真空状態が起こりやすい環境となるリスクもある。

 今のところトランプ氏が選挙中に示した政策は、減税や交通インフラ整備への大型財政支出など「ビジネス寄り」で、マーケットの期待感が高まったが、本当の実行性はこれからの課題となる。

 また、トランプ氏個人には連邦税未納などスキャンダルの火種もあり、大統領就任直後から1年程はどのような変化をもたらすのかという期待と、新大統領を弾劾する動きとが拮抗(きっこう)するのではないだろうか。

 日本にとっても日米同盟の見直しや経済・軍事面で相応の負担を求められることになるだろう。筆者には、新大統領が日本に対して「もっと自立せよ」と言っているようにも聞こえる。

 日本も「ジャパン・ファースト」で、成長戦略を見直し、産業構造の変革や国民経済を立て直す好機となるのではないか。既得権益や既存の政治を見直す意味で、変化をチャンスと捉えるべきだろう。

 同様に、欧州に関しても反エリート主義や既存メディアへの反感といった「トランプ現象」は、英国の欧州連合(EU)離脱問題のごとく欧州大陸にも波及し、フランス・ドイツの国政選挙では「自国ファースト主義」の政党を大きく躍進させることになりそうだ。
(文=大井幸子・国際金融アナリスト兼SAIL社長)
日刊工業新聞2016年11月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
筆者の大井さんの言う通り日本はアベノミクスを見直すチャンス。しかも政権が安定しているのは外交でも内政でも大きなアドバンテージである。安倍さんはトランプ氏、米国に臆することなく渡り合えばい。

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