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囲碁AIvs 趙治勲名誉名人、ドワンゴ・日本棋院「囲碁電王戦」開催

囲碁AIvs 趙治勲名誉名人、ドワンゴ・日本棋院「囲碁電王戦」開催

ドワンゴのウェブサイトより

 ドワンゴ(東京都中央区)と日本棋院は、東京大学などと開発中の囲碁AI(人工知能)「DeepZenGo(ディープゼンゴ)」と、史上最多タイトル獲得数74を誇る趙治勲名誉名人(60)がハンデ無しの3番勝負で対局する「囲碁電王戦」を19、20、23日に開催する。趙名誉名人は「9月にディープゼンゴの打ち手を見た時は普通に強いという印象だった。2カ月でどれぐらい強くなったか分からないが、負けるわけにはいかない」と闘志をみなぎらせた。

日刊工業新聞2016年11月11日



「アルファ碁」を振り返る。日本のAI研究はどうなるのか


 囲碁を制覇―。米グーグルの人工知能(AI)が世界最強の棋士を下した。囲碁は最も難しいゲームの一つで、AIが人間に勝つには10年はかかるとされてきた。チェスや将棋に続き、囲碁を攻略したことで盤上はAIが制したと言える。囲碁界とAI、両業界で衝撃が広がっている。

 米グーグル傘下の英グーグル・ディープマインドが開発した囲碁AI「アルファ碁」が韓国のイ・セドル九段を4勝1敗で下した。日本棋院の和田紀夫理事長は「予想を超えた結果」と驚きを隠さない。AI研究者の間でも激震が走った。人工知能学会会長の松原仁公立はこだて未来大学教授は「従来の囲碁AIをあっさりと抜き去り、はるか先に行ってしまった」という。

 囲碁は終局までの手順が10の360乗と天文学的な数になる。すべての手を計算することは不可能だ。計算する範囲をいい打ち筋に絞り込むことが必要だった。アルファ碁はディープラーニング(深層学習)という手法で棋力を飛躍させた。10万以上の棋譜をAIに学習させ、仮想試合を3000万局以上重ねて打ち筋を絞り込む。膨大な計算資源が必要なため普通の研究者には手が届かなかった。

 実は囲碁AIは日本がリードしてきた分野だ。いいアイデアやアルゴリズムがあっても、計算能力が足りずに性能が出ないことが多々あった。松原教授は「知恵を絞るよりも、巨大な計算機で試せばうまくいく。研究者が自分のアイデアを試すために計算資源を求めてグーグルを目指す。この構造をアルファ碁の成功は如実に表している」と指摘する。

 また囲碁以外にも急にAIが人間の能力を上回る仕事は出てくるだろう。深い思慮が必要な仕事でも、ルールがシンプルなら計算機の力で解けることが証明された。

 深層学習は音声や画像の認識では成功していたものの、意味の理解などを伴う記号処理は今ひとつだった。アルファ碁は仮想試合を重ねて盤面の優勢劣勢を理解した。その仕事をシミュレーションできるかどうかがAIに代替される分かれ目になる。

 ディープマインドのデミス・ハサビスCEOは「アルファ碁は囲碁以外にも応用できる汎用的な技術。ヘルスケアなど幅広い分野に展開したい。そのためにオープンな共同研究を進める」と対局後の授賞式で語った。

 チェスの王者がAIに敗れた年、欧州ではチェスから囲碁に競技人口が流れたとされている。日本棋院の和田理事長は「結果にかかわらず囲碁が持つ力や教育効果は変わらない。AIと人間との継続的な連携が経済や生活の豊かさに貢献することを期待する」という。

 囲碁界とAIの協働は、これからAIが台頭する業界の模範となれるのだろうか。今後の動向が注目される。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2016年3月18日

昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
第一回目の「囲碁電王戦」は2014年2月に開催されていました。プロ棋士2人とアマチュア棋士1人、当時生活の党代表だった小沢一郎氏と、囲碁ソフト「Zen」が対戦。小沢氏以外がソフトに勝利しています。さて今回はどうなるでしょう。

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