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工科高校内にベンチャー「城工房」。オモチャ修理ボランティアや石焼き芋機製作

大阪府立城東工科高校、地域との交流
工科高校内にベンチャー「城工房」。オモチャ修理ボランティアや石焼き芋機製作

製作した焼き芋機を囲む城工房のメンバー。右から2人目が6代目社長の向井雅騎さん

 大阪府立城東工科高校はモノづくりの町、東大阪市に位置し、3年後に90周年を迎える。大阪府から「地域産業連携重点型」の工科高校に指定され、地域との交流を重視。同時にグローバルな視点で物事を考える教育に力を入れており、韓国の城東(ソントン)工業高校と3年前に姉妹校提携を結んだ。広い視点からモノづくりを考える枠組みを推し進めている。

 地域交流の核となるのが「城工房(じょうこうぼう)」という取り組み。校内起業で、社長も社員も生徒で構成している。主な活動は毎月地域の親子を対象に開催するオモチャ修理ボランティア。ぬいぐるみから「プラレール」までさまざまなオモチャが持ち込まれる。地域貢献だけでなく、生徒のコミュニケーション能力向上にもつながるという。

 城工房では地元企業と協力して石焼き芋機も製作し、地域貢献に一役買っている。一度に調理・保温をそれぞれ25本ずつできるのが特徴で、ピザ、焼き肉など多用途に使える。地域の子育て支援センターやスポーツイベントで実演しており、災害時の炊き出し用として使うことも想定している。既にいくつかのNPO団体や大学が導入している。

 グローバル人材の育成にも力を注ぐ。川﨑政宏校長は「IoT(モノのインターネット)やロボットの普及で市場は世界に広がる。生徒が世界視野を持つきっかけを与えたい」と、その必要性を説く。2013年に結んだ韓国城東工業高校との姉妹校提携を皮切りに、韓国や台湾の同世代の学生と交流。18年の修学旅行は台湾訪問を計画している。12月には全学年から希望者を募って台湾への海外研修を実施し、現地に拠点を持つ日系企業などを訪問する予定だ。

 同校では1年時に工業技術の基礎である中学レベルの数学、物理などを学び直し、専門科目や就職試験などに備える。基礎学力の底上げを図りながら、地域と連携した活動に携わり、高校生という早い段階で社会と関わる機会を設けている。

 川﨑校長は生徒に対し、工業の枠組みにとらわれない選択肢を「どう広げていくかが課題」と話す。広い視野からモノづくりを考えることができる人材を育成するために、地域連携やグローバル教育に取り組んでいる。
(文=大阪・大原佑美子)

【DATA】▽校長=川﨑政宏氏▽所在地=大阪府東大阪市▽学科構成=工業科(機械系、電気系、メカトロニクス系)▽総定員=960人▽主要設備=ユニバーサルデザイン(UD)棟、レーザー加工機、3次元CADシステム、3Dプリンターなど▽主な進路=近畿車両、エクセディ、阪急電鉄、フジパン、トヨタ自動車、鶴見製作所、東芝エレベータ、大阪工業大学、関西大学など
日刊工業新聞2016年11月11日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
モノづくりによって人が喜ぶ姿、持ち込まれる多種多様なものを修理する対応力、地域の人との交流など多くの経験を積んだ学生たちは、どこへ出ていっても強いと思います。

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