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為替で1兆1000億円利益押し下げ。自動車7社「等身大の実力」映し出す

激動の半年、5年後に向けて布石を打つ
 トヨタ自動車が2016年4―9月期連結決算を8日発表し、乗用車7社の業績が出そろい全社減収となった。営業利益はホンダスズキが増益となり、トヨタ自動車など4社は減益に終わった。三菱自は燃費不正問題で赤字転落となった。円高を中心とする為替変動が逆風となった。

 7社合計で為替が1兆1000億円利益を押し下げ計5300億円のコスト減による増益効果を打ち消した。前年同期比で米ドルは円に対して17円円高に振れ新興国通貨安も業績の足を引っ張った。

 世界販売は三菱自の不正問題の影響を受けた三菱自と日産を除き全社増。トヨタは国内で増加し北米で減少した一方、ホンダがその逆となるなど販売増の牽引地域は異なった。

 各社主力の米国市場はガソリン安を追い風にスポーツ多目的車(SUV)など「小型トラック」の販売が拡大し「乗用車からトラックに需要が激しくシフトしている」(伊地知隆彦トヨタ副社長)。日本車が得意とする乗用車市場を中心に販売競争が激化しておりトヨタは販売減となった。日産は販売増になったが「インセンティブ(販売奨励金)の水準が上がっている」(ジョセフ・ピーターCFO)ことが利益押し下げ要因となった。

 営業増益組のホンダはコスト減に加え、前期まで利益を圧迫していたタカタ製エアバッグの欠陥問題による品質関連費用がなくなったことが大きい。営業利益が過去最高を記録したスズキは、為替の減益効果を打ち消すほど主力インドでの販売が好調に推移した。

 日産を除く全社が業績見通しを修正したが修正方向はまちまち。為替の想定レートを円高ドル安方向に修正したマツダと富士重工業は為替の減益効果が拡大するとみて営業利益を下方修正した。トヨタは逆に為替を円安方向に修正。コスト減効果を追加的に見込むこともあって営業利益を上方修正した。スズキはインド販売好調による上振れを織り込み、減益予想から一転営業増益を見込む。達成すれば過去最高になる。
日刊工業新聞2016年11月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
この上半期が自動車業界にとって激動の年だった。三菱自動車、スズキの燃費不正問題を契機に三菱自は日産の傘下に入った。トヨタの上場子会社だったダイハツは100%子会社になり、その地ならしもあってトヨタとスズキが提携に動く。富士重は「SUBARU」への社名変更を発表、マツダとホンダは予想以上に国内販売が苦戦、課題解決に向け動き出している。トヨタの章男社長は今年春の会見で、今期の業績は円安のボーナスがなくなり、「等身大の実力」が試されると話した。等身大から見えてきたものに対し、各社は5年先の手を打ったといえるだろう。5年後の2021年は自動運転車が本格的にリリースされる年と見られている。トヨタがEVへもじわりシフトする中で、IT系やテスラなどの競争相手からも目が離せない。

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