AIで不正会計は防げるか。大手監査法人が研究に乗り出す

実際の業務に使えるのは5―10年かかるという見方も

 大手監査法人が不正会計発見や業務効率向上を狙い、AI(人工知能)の活用研究に乗り出している。オリンパスや東芝などの会計問題が起こるたびに、企業監査の業務工程が増大。また近年は公認会計士試験を目指す学生が減少し人材不足が深刻化、特に若手会計士へのしわ寄せが大きい。各法人はIT監査の高度化やAIの活用により、問題解決を目指している。

 新日本監査法人(東京都千代田区、辻幸一理事長)は、東京大学大学院の首藤昭信准教授と共同で、将来の不正会計を予測する仕組みを7月に導入した。過去5年分の上場企業の財務諸表データを活用。企業が会計不祥事を起こした際の財務諸表の特徴を参考に、不正発生確率を算出。高確率とされた企業の担当会計士に連絡し、注意喚起する仕組みだ。

 また、新日本監査法人がメンバーである世界4大会計事務所のアーネスト・アンド・ヤング(EY)では、AIを使い、クライアントの仕訳データや元帳・補助元帳のデータを分析するシステムを開発、世界の企業250社で導入済みだ。日本でも新日本監査法人を通じて、「すでに50社で導入されている」(大久保和孝新日本監査法人経営専務理事)という。

 あずさ監査法人(同新宿区、酒井弘行理事長)でも、ビッグデータ分析により監査作業を高精度化・効率化する取り組みが進む。企業が記録・管理する財務および非財務データを入手。対象となるすべての取引について各データ間の関係性を分析し、異常がないか検証している。

 またあずさ監査法人と同グループである米国KPMGではIBMの人工知能「ワトソン」の監査業務への導入を検討。日本でもあずさ監査法人の「次世代監査技術研究所」が協力し、AI導入研究を進めている。

 PwCあらた監査法人(同中央区、木村浩一郎代表)は、10月末に「AI監査研究所」を設立した。木内仁志執行役副代表が中心となり、国内30人体制でAI活用について研究する。

 各法人ともAI研究に着手しているが、現在のAIレベルはまだ低く「実際に監査業務に使えるのは5―10年かかる」(大手監査法人)との意見が多い。またAI監査が実現しても、最終的なチェックは人間の会計士が行わねばならず、業務の効率化がどこまで進むかも疑問だ。

 とはいえAIの進歩は日進月歩で、近い将来、業務に耐えうるAIができる可能性は大きい。不正会計を減らすため、各法人の研究が実を結ぶことが期待される。
(文=鳥羽田継之)

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
11月09日
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かつて国が旗を振り、公認会計士の増加を目指したことがあった。だが、直後にリーマンショックが起こり大手監査法人が採用を控えたため「資格を取っても就職できない」イメージが広まり、結果受験生が減少してしまった。足元では会計士不足が深刻化。東芝問題などで監査法人への不信が起こる中、今後も人手不足は続きそう。逆境をバネにコンピュータ監査の高度化、AI監査研究が進むことを期待したい。
(日刊工業新聞経済部・鳥羽田継之)

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