環境問題から見た米大統領選。トランプ政権で温暖化政策はどうなる?

国際環境経済研究所の山本所長に聞く。「米中の環境協力は続く」

 米大統領選挙が8日に迫ってきた。気候変動を信じていない共和党のトランプ候補、再生可能エネルギー拡大を掲げる民主党のクリントン候補が争う選挙結果は、7日からモロッコで始まる国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)に影響を与えるのか。国際環境経済研究所の山本隆三所長(常葉大学教授)に大統領選後の米国の温暖化政策を聞いた。

 ―トランプ氏は「温暖化問題は中国のでっちあげ」と発言し、気候変動に懐疑的な立場です。
 「2008年にオバマ氏の温暖化対策に賛同する新聞広告に名を連ねた。本音では気候変動を信じているが、共和党の大統領候補になろうと懐疑論者になったのだろう」

 ―トランプ氏が大統領になると米国の政策は変わりますか。
 「オバマ政権が打ち出した発電所の二酸化炭素(CO2)排出規制政策(クリーンパワープラン)はやめるだろう。トランプ氏は『強い米国』のためにエネルギー自給率100%を目指すのだから、石炭火力も容認するとみる」

 ―クリントン氏は民主党の候補者選びで争ったサンダース氏の主張を取り入れ、気候変動問題を重要視しているようです。
 「クリントン氏は太陽光パネルを5億枚設置して雇用も増やすと訴えるが、大統領に就任すると現実路線に戻って大胆な政策をとれなくなる。ただし、CO2の回収は経済的に難しいと考えており、石炭産業に未来はないと思っている。クリーンパワープランを強化するだろう」

 ―COP22への影響は。
「トランプ氏が選ばれると、COP22の会場にいる米代表団は困る。民主党政権から派遣されているから発言力が低下する。そもそもCOP22で大きな決定事項はないから、クリントン氏が選ばれても大勢に影響はない」

 ―一番の懸念はトランプ大統領が誕生し、パリ協定から離脱することです。米国と歩調を合わせてきた中国の温暖化対策に影響が出るのでは。
 「離脱しても米中の環境協力は続ける。なぜならビジネスとして重要だからだ。米国の名だたる大企業が温暖化対策の市場を狙っており、中国との協力を維持する」


【記者の目・脱炭素市場の獲得目指す】
 パリ協定は発効後3年は離脱できない。オバマ政権が批准したので共和党政権になってもすぐの離脱はない。大統領選の動向にかかわらず、パリ協定発効後の脱炭素市場の獲得を目指し、米企業は動きだしている。米国が京都議定書に批准しなかったようなショックはなさそうだ。
(聞き手=松木喬)

松木 喬

松木 喬
11月03日
この記事のファシリテーター

私的メール問題でクリントン氏の支持が減り、トランプ氏にも大統領の可能性が出てきたようです。気候変動は大きな争点ではありませんが、TV討論会でクリントン氏がトランプ氏の攻撃材料にしてクローズアップされました。テスラをはじめ、アップル、マイクロソフトなど、米の巨大企業が気候変動をビジネスチャンスに変えようとしています。政策にかかわらず、ビジネスの嗅覚で動いています。大統領選の仕組みは「徹底解説!アメリカ波乱続きの大統領選挙」(ポプラ新書)が勉強になりました。

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