世耕経産大臣インタビュー、下請法改正「しつこくフォローアップする」

『同一労働同一賃金』は産業別の事情を反映できる形に

 大企業の収益は拡大傾向にあるが、製造業を中心に中小企業の生産性は伸び悩み、その格差は広がっている。親事業者と下請け事業者の取引環境の改善を通してサプライチェーン全体の“稼ぐ力”を高め、経済の好循環を生む「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)を公表した世耕弘成経済産業相に、政策の焦点、働き方改革などについて聞いた。

 ―世耕プランの狙いと浸透状況は。
 「正当な取引がなされれば、大企業に集中するアベノミクスの果実を中小企業も享受でき、賃上げや設備投資につながる。経団連や自動車、電機・IT業界、繊維業界などに申し入れた。年内に自主行動計画を大筋策定していただければ、年度末の(各社が下請け事業者に要請する)単価見直しにぎりぎり間に合う。新たな課題にも対応するためしつこくフォローアップする」

 ―2次、3次下請けになると中小企業同士の関係になります。
 「そこが難しいところだが、まずは大企業が社会的責任としてサプライチェーン全体の責任を持つことが重要。その上で親事業者になっている中小企業に激変のない配慮を施さねばならない」

 ―公正取引委員会も下請代金支払遅延等防止法の違反事例追加に向けた運用基準見直しに動きます。
 「よく頑張ってくれた。下請け取引に関し、大企業にとっては“べからず集”が増えるわけだから、強力なメッセージになる」

 ―大企業が発注を海外に移す懸念は。
 「長期の円安トレンドや海外ならではのリスクを考えれば、すべてがプラスにはならないはず。国内の中小企業とコストダウンの工夫を話し合うべきだ」

 ―働き方改革も大きな課題です。
 「外国人投資家と対話をすると日本の労働力人口が減る中、なぜ経済成長を成し遂げられるのか非常に懐疑的だと言われる。女性や高齢者の参加でカバーできると説明してきたが、生産性向上の具体的メッセージを出さねば市場から信認されない。生産性の高い企業へ労働力の流動性を高める仕掛けを考える必要がある。『同一労働同一賃金』は産業別の事情を反映できる形にしなければならない」

 ―中小企業には難しい面もあります。政策支援などは。
 「7月に施行された中小企業等経営強化法による固定資産税の減免措置などをうまく使いながら生産性を高めてほしい。事業承継については、同じ地域で優秀な経営者のいる会社がミニコングロマリット(複合企業)のように事業を引き受け、金融機関がそれを支える必要がある」

【記者の目・大企業の実行力が浸透のカギ】
 自動車コストの7割程度がサプライヤーからの調達部品といわれる。今年、春闘相場のリード役であるトヨタ自動車が率先してサプライヤーとの賃金格差是正に動いたことを世耕経産相は「ムードメーキングとして非常に良い動きをしてもらった。サプライチェーン全体に責任を持つ発想だ」と評価した。取引環境の改善も同じ。かけ声ではなく、大企業の実行力が浸透のカギを握る。
(聞き手=鈴木真央、古谷一樹)

日刊工業新聞2016年11月1日

明 豊

明 豊
11月01日
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下請け取引の適正化は、政府全体で対策に力を注いでいるテーマ。公取委は下請け事業者の利益保護を目的とする下請法の運用基準について改正案を作成し、一層の運用強化に取り組む。具体的には、親事業者による「買いたたき」や「減額」といった違反行為の事例を現行の66件から134件へと大幅に増やした。下請け事業者に対し十分に協議せずに、通常より大幅に低い下請け代金を設定することや、部品の大量発注後に長期間発注しないにもかかわらず無償で金型を保管させることについても、違反事例として明記している。

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