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「シビック」国内生産再開へ。ホンダ、日米欧の需給バランスに安定感

来年秋から狭山工場で。八郷体制で6極自立の施策から軌道修正
「シビック」国内生産再開へ。ホンダ、日米欧の需給バランスに安定感

売れ行き堅調のシビックセダン

 ホンダは2017年秋にも国内で主力セダン「シビック」の生産を始める。17年内に日本で発売する。シビックの国内生産は10年に生産を終了して以来7年ぶりとなる。海外で主力のシビックを国内でも生産することによって、低迷する国内生産の稼働率を改善する。国内販売のテコ入れにもつなげる考えだ。

 サプライヤーに生産計画を伝えた。生産場所は狭山工場(埼玉県狭山市)。北米など輸出モデルを同工場で生産することも検討している。

 ホンダは18年度にも国内生産を90万台半ばまで拡大する方針を掲げている。15年度は76万台だった。小型車「フィット」などの輸出モデルの拡大で足元では増えているが、新規車種の生産を始めることによって、国内生産を着実に拡大基調にのせる考え。シビックは15年秋に全面改良し、北米を皮切りに発売。堅調な売れ行きを示している。シビックの国内生産は、ハイブリッド車(HV)仕様を最後に10年末に終了していた。

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日刊工業新聞2016年10月31日



「シビックは他社にはない魅力がある」


国内販売担当、寺谷執行役員インタビュー


―販売が苦戦しています。
 「前年はミニバン『ステップワゴン』の全面改良があって水準が高かった。水準が落ち込んでいるわけではない。市場は厳しいが既存モデルと今月発売した小型ミニバン『フリード』の全面改良でふんばりたい」

 ―熊本製作所(熊本県大津町)が被災して今期の販売計画を下方修正しましたが完全復旧しました。計画は再修正しますか。
 「地震の影響を受けた軽自動車の生産が9月に戻ったが、5カ月止まっていた分販売は失われてしまった。今のところ68万5000台から上方修正するとは言えない。フリードが期待以上に売れればプラスアルファできるという思いはある」

 ―環境や安全技術の投入の見通しは。
 「環境についてはハイブリッド車(HV)をしっかり広げることが先決だ。ホンダのハイブリッドシステムはコスト競争力に優れている。これを多くの人に乗ってもらうことが環境戦略の生き残る道だ。プラグインハイブリッド車(PHV)は市場を見ながら対応していく。安全技術は顧客の意識が高まっている。フリードの受注では安全技術群『ホンダセンシング』を選んだ顧客は8割強と高水準だ。改良の時期を見て他の車種にも拡大したい」

 ―市場が成熟する中で拡販は難しくないですか。
 「他社も同じだが自社の顧客を守ることが大原則だ。ホンダは1000万台の保有を持ち(代替えによる)一定の需要は確保できる。だがそれだけでは増えない。他社の顧客に次にホンダを選んでもらうためには、これなら乗りたいと思われる商品がなくてはいけない」

 ―具体的には。
 「ミニバンと軽自動車と小型車の商品は充実している。それ以外の車格でも魅力を提供する必要がある。そういう意味で主力セダン『シビック』の国内投入を計画している。シビックはスポーティーなデザインが売りで米国や中国で受けている。他社にはない魅力があるし、日本にはない商品だから新しい顧客がとれるはず。シビックのようなグローバルモデルを使ってブランドを高めたい」

【記者の目・得意車格の競争力を維持】
 シビックのセダン市場は輸入車が攻勢を掛けていて日本車は劣勢だ。確かにシビック投入は新たな流れを呼び起こすかもしれない。だが、成熟する国内市場で今の立ち位置を維持するには、得意とするミニバンと軽と小型車の競争力を維持することが大前提となるだろう。これら車格は特に他社の攻勢が激しい。
(文=池田勝敏)

日刊工業新聞2016年9月30日

中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
「シビック」の国内生産再開は、八郷氏の世界6極の生産体制を融通し効率を改善させる施策の仕上げである。6極自立を掲げ、海外工場拡張を進め、国内販売で十分と日本輸出台数を止めてしまったのは如何にもバイク好きの伊東元社長のぶっ飛ばし経営。「販売が計画を下回ったらどうする」というような発想が無い経営とは如何なものか。とん挫した600万台計画を修復するために、英国工場に「シビック5ドア」、米国へ「CR-V」を集約し、「フィット」をメキシコから日本へ一部移管した。そして「シビック」を国内生産に回帰させることで、日・米・欧の先進国需給バランスは一定の安定感を回復できるだろう。様々な経営改革の効果は2017年に揃う。

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