IHIの海洋構造物、存続か撤退かの瀬戸際に

LNG船用SPBタンクなどで大幅なコスト増が露見

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ボイラの主力製造拠点である相生工場
 IHIのモノづくりが転換点を迎えている。24日、船舶向けで液化天然ガス(LNG)を貯蔵するSPBタンクの溶接作業を起因とする後戻り作業など、複数案件で大幅なコスト増が露見。2016年度の通期業績見通しの下方修正を余儀なくされた。前期を含む度重なる下方修正に、満岡次郎社長は「16年度でウミを出し切り、V字回復につなげたい」と決意を表明。海洋構造物関連事業は、存続か撤退かの瀬戸際にきている。原点であるモノづくり力の再興で、信頼回復につなげる正念場といえる。

 「溶接技術は当社のモノづくりの原点であり、“一丁目一番地”だ」―。24日に下方修正を受けて臨んだ会見の場。満岡社長は自社のモノづくりをこう振り返った。国内向けLNG船用SPBタンクの建造工事。第1船最初のタンクを船体に搭載する工程で、作業難度が想定を超えた。

 タンクは上部、下部の巨大ブロックをそれぞれ組み立て、船内で一体化する。高度な精度管理と溶接品質が必要で「技術や知見が及ばなかった」(満岡社長)。前期も含め度重なる下方修正の一因となった海洋構造物事業。その今後について満岡社長は「あらゆる可能性を排除せず検討する」と強調した。

 仮に撤退や長期間の受注停止を選択すれば、技術の進化や継承は停滞する懸念がある。造り続けることが、技術・知見の蓄積や高度化につながる見方もある。

 その上で満岡社長は「一旦やめても技術や人材の継続性を保つやり方はある」と説明。難しい経営判断を迫られるが、全社のモノづくりを見直す機会にもなるだろう。

ボイラ事業がモノづくり再興の試金石


 IHIがモノづくり力で再興を目指す試金石の一つとなるのが、ボイラ事業の再建だ。前期の業績悪化の主因となった同事業は現在、再建を加速している。

 インドネシア子会社で製作中の大型ボイラの一部に溶接材料の取り違えが判明。補修費用や納期遅延が収益を圧迫した。このため今期から、ボイラの品質管理に精通した本社の人員を子会社の要職に就けたほか、現地の中間管理職向け研修を相生工場(兵庫県相生市)で始めた。

 IHIの火力発電用大型ボイラの主力製造子会社、PTチレゴンファブリケーターズ(PTCF)。16年4月から、同社会長にボイラの品質管理に明るいIHI本体の遠井正明エネルギー・プラントセクターセクター長補佐、社長に永吉正和前相生工場製造部長が就任。本社主導による改革を鮮明にした。

 PTCFには品質保証部を新設し、遠井会長が所管する。PTCFの現場管理者である課長・職長を対象とした研修も相生工場で開始。20―30人を相生工場に派遣する計画だ。

 職種により異なり数週間から数カ月単位で、日本の品質管理や工程管理などを習得。村角敬相生工場工場長は「日本でやっていることを現地で伝えるのは難しい。相生でマネジメントの手法を学んでもらう」と話す。
(文=長塚崇寛)

日刊工業新聞2016年10月26日

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長塚崇寛
名古屋支社編集部
編集委員

一進一退が続くIHIのモノづくり改革。課題を一つひとつクリアしながら、モノづくりの体制をいかに再構築できるかが、復活の行方を左右する。

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