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新工場立ち上げも「777Xへの移行期は歯を食いしばるしかない」(富士重)

中央翼工場を公開
新工場立ち上げも「777Xへの移行期は歯を食いしばるしかない」(富士重)

半田工場の新棟

 富士重工業は24日、米ボーイングの次世代大型旅客機「777X」の中央翼を組み立てる半田工場(愛知県半田市)新棟を公開した。2017年2月に組み立てを始め、同年11月に初出荷する予定。自動打鋲機や自動搬送装置の導入により、ボーイングが777Xの生産に参画する企業に求めるコスト削減に対応する。

 中央翼は航空機の主翼と胴体をつなぐ部位。半田工場では大型機「777」と中大型機「787」の中央翼を組み立てており、新棟で777X向けを手がける。永野尚専務執行役員は「777X向けの投資負担で営業利益は数年間下がるが、777からの切り替えが進めば回復する」との見通しを示した。

 777Xは17年に量産が始まり、20年に初号機を引き渡し予定。日本企業は富士重など5社が参画し、主要構造部位の21%を担当する。

日刊工業新聞2016年10月25日



航空機事業トップに聞く


 富士重工業の航空宇宙事業が調整局面に入った。円高基調の為替や主力の民間航空機向け中央翼が新シリーズに移行することなどを受け、今期の営業利益が前期の182億円から半減する見通しだ。苦境からの脱出に向けて、次の一手をどう打つのか。永野尚専務執行役員航空宇宙カンパニープレジデントに聞いた。

 ―中央翼は米ボーイング向けが多く、航空宇宙事業の為替感応度は非常に高いと言えます。
 「足元は若干円高に振れているが、これまでの取り組みもあるので冷静にやっていける水準だ。かつての超円高で相当鍛えられた。ただ、為替変動はいかんともしがたいので、自動車で培ったノウハウも活用し生産性向上をさらに加速する」

 ―生産性改善に向けた取り組みは。
 「当社が受け持つ中央翼は箱型の構造物で、ロボットの適用は難しい。内部の鋲打ちなどは人の作業になる。ただできることはたくさんある。例えばリベットやボルトを打つ工具の自動化。任意の場所に工具をセットすれば、自動で打ち込めるツールなどを導入した」

 ―ボーイング「787」の増産対応は。
 「787は現在、月産10機体制だが、1年以内で12機に上がる。さらに1年から1年半くらいで14機に達すると見ているが、ボーイングから具体的な指示を待っている状態だ。787向けの投資は完了しており、14機になっても対応できる」

 ―ボーイングのベストセラー機「777」の次世代機「777X」の量産も控えていますが課題をどう見ていますか。
 「777から777Xに移行するところで踊り場となるが、これが航空機のビジネスモデルだ。生産レートが緩やかに上がる過程で777が下がり、どうしても需要の谷間となる。この期間は歯を食いしばるしかない。ここを787で埋められるのが理想だ」

 ―研究開発の状況は。
 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、『落ちない飛行機』というコンセプトで共同開発を行っている。鳥の衝突などで主翼の一部が破損しても、人工知能(AI)搭載のフライトコンピューターが状況を瞬時に把握し、自動制御する技術だ。当社の無人機のノウハウを有人機に融合し、安全性のさらなる向上に貢献したい」

 ―国産小型ジェット旅客機「MRJ」開発の意義をどう考えますか。
 「完成機をやり遂げるという志を持った三菱重工業グループには、本当にがんばってもらいたい。MRJの後も完成機を国家的事業でやることは、工業先進国として必要だ。当社単独での旅客機開発は無理だが、オールジャパンで開発する可能性もあるので、技術レベルの向上など準備はしていきたい」

【記者の目・日本の航空機産業に貢献を】
 業績の停滞期に次代を見据えた投資や開発をいかに進められるかが、反転攻勢のカギを握る。今期は777X向け機体部品製造の投資ピークに達するが、人工知能(AI)を活用したフライトシステムなど技術開発にも力を入れる。次代に向けた技術開発への手綱を緩めず、日本の航空機産業に貢献してほしい。
(聞き手=長塚崇寛)

日刊工業新2016年7月28日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ボーイングは生産能力の増強とコスト低減の両立をサプライヤーに求めている。各社は777X向けで、現状比15―20%のコストダウンが必要とみている。富士重は今期に航空機事業の設備投資で前期比約2・3倍の140億円を計画、「777X」の機体部品向け自動化投資が中心。新設備を導入するのは宇都宮工場と半田工場。中央翼を組み立てる半田新工場では、宇都宮で加工した部材を7メートル四方の1枚板に仕上げる。大物部品の搬送を現在主流のクレーンから自動搬送装置に切り替える。連続搬送が可能になり生産性が高まるという。 堅調に見えた民間航空機市場にも変化、ボーイングとエアバスが相次いで大型機の減産を打ち出している。777の受注は14年の283機をピークに15年は58機で着地。受注残も15年に524機となり、09年以来6年ぶりに純減した。ボーイング首脳は「必要に応じてさらに減産する可能性もある」と示唆している。

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