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中堅半導体メーカー、じわり存在感。国内生産の増強とその先にあるもの

IoT時代に多品種少量の強み。セイコーインスツルは分社し再編に備え
 日本の中堅半導体メーカー各社が、国内工場の増強に動いている。新電元工業は2018年度までに秋田県と山形県の両工場の生産能力を倍増させる。サンケン電気は3月までに山形県などの3拠点の増強へ、計45億円を投資した。自動車のIT化、モノのインターネット(IoT)の普及拡大を受け、求められる半導体が多様化していることが背景。国内半導体産業は、システムLSIなど先端分野では劣勢に立たされるが、パワー半導体など多品種少量生産分野では存在感を高めつつある。

 新電元工業は生産子会社の秋田新電元(秋田県由利本荘市)と東根新電元(山形県東根市)のパワー半導体モジュールの生産ラインをそれぞれ1本増やし2ラインにする。自動車や産業機器メーカーなどの引き合い増加に対応する。18年度までにパワー半導体事業の売上高に占めるモジュール品の比率を現状の数%台から3割に引き上げる。

 サンケン電気は山形サンケン(山形県東根市)、石川サンケン(石川県志賀町)など3拠点を増強した。いずれも車載向けや白物家電向けパワー半導体の旺盛な需要に対応するもので、15年度以降も投資を継続する見通しだ。セイコーインスツル(SII)は電源用ICなどの後工程を担う秋田事業所(秋田県大仙市)の増強を検討。秋田を「製品の高品質と小型化を図る技術の源泉」(藤井美英会長)と位置づける。

 IoT普及拡大に伴い半導体が使われる製品はスマートフォンやパソコンなどデジタル機器から広がっている。その結果、パワー半導体や電源IC、センサーなどの半導体需要も伸びている。

 これらは組み込む製品ごとにカスタマイズを必要とするケースが多く、各社の独自技術が製品性能を左右する要素が大きい。日本には、多品種少量生産に対応した半導体工場がいまだに数多く、競争力を維持している。

(日刊工業新聞2015年04月14日1面)

 セイコーインスツルが半導体事業分社へ
  セイコーホールディングス(HD)は12日、傘下の事業会社であるセイコーインスツル(SII)の半導体事業を分社化すると発表した。SIIが60%、日本政策投資銀行が40%を出資して設立する新会社に移管し、両社で共同運営する。2015年10―12月期に手続きを完了する予定。半導体業界は世界的な合従連衡が加速しており、セイコーHDは単独で半導体事業を成長させることは難しいと判断。分社化により設備投資や研究開発費を確保する。

 同日、SIIと政投銀が半導体事業の共同出資会社を設立することで基本合意した。今後、条件を詰め、7月中に正式契約を交わす予定。将来は政投銀が70%を出資することも視野に入れる。SIIの半導体事業は、メモリーの一種である「EEPROM」や電源ICなどのアナログ半導体が主力で、売上高は300億円程度。政投銀との新会社では生産能力増強や開発機能強化に取り組むほか、積極的に他社との連携やM&A(合併・買収)を行う。
日刊工業新聞2015年05月13日 2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
カスタマイズのニーズの中で、いかに規模のメリットを出していくか。この業界、これからなかなか興味深い。

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