人類なら知っておきたい、「人工知能」の今と未来の話

大阪工大・本田教授に聞く「知識を知恵に変えられる人材づくりを教育で」

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大阪工大パーソナルロボット&アクチュエータ研究室のページより
 ―今回は監修(※)という立場です。
 「出版元から『内容について助言がほしい』と相談を受けて、監修を初めて引き受けた。ロボットや人工知能(AI)は最もホットなテーマの一つ。自ら書くと時間や手間がかかって機を逃してしまう。スピード感を持たせるためにも監修の方がやりやすかった」

 ―ロボット、AIのさまざまな話題に触れています。
 「ロボットやAIは最先端の技術。でも一般の人が使うものだ。一般人でもしっかり先端技術を理解し、今後のロボットやAIの発展、社会への普及で起こりうる利点や問題を把握した上で支援してもらいたかった」

 「そうした理由もあり、入門書として誰でも読みやすく、目次を見てどこからでも疑問に思った事柄を読めるよう2ページ1項目の構成にした。私はロボット畑の人間でAIの専門家ではないが、ロボットとAIは既に分離できないものと考える。AIについても『AIという言葉にだまされない』ために多くの項目を盛り込んでいる」

 ―ロボット研究を長く続ける立場として、日本のロボット研究の進捗(しんちょく)に満足していますか。
 「国もロボット技術の重要性に気付き、ちゃんと支援している。だが、日本はまだ生活を変革するような本当のイノベーションを起こしていない。小型化といった、あるものを工夫する事にたけても社会の“次”をゆく製品が作り出せていない」

 「ロボットやAIは世界中で変革につながるアプリケーションを考えている最中だ。ここで一歩先んじるには、専門家だけでなくユーザーとしての一般人もアイデアを出していく必要がある。表紙にアニメ調の女の子を配したのは多くの人に手に取ってもらいたいという意図を込めた」

 「日本はこれまで中央集権的な制度の下、『欧米に追いつき追い越せ』でやってきた。そのための教育制度を敷いている。今は創造性や変革を起こす人材が必要なのに、制度が変わっていない。知識を知恵に変えられる人材づくりを教育でも目指す必要がある」

 ―社会制度やインフラの変化もロボットやAIの社会実装に不可欠との意見です。
 「例えば、ロボットやAIの技術を駆使した自動運転車が公道を走行するとき、周りのクルマが交通法規をどこまで順守するかが問題になる」

 「今は信号が黄色でも止まるクルマ、止まらないクルマがある。自動運転車だけが黄色でしっかり止まったとして、周りの対応が曖昧のままで事故につながらないか、交通網に支障が出ないか、といった問題はしっかり議論する必要がある」

 「今あるルールの中にロボットやAIをただ放り込んだとしても混乱があるだけだ。一般人の受容性や、ルールづくりなど社会の成熟も先端技術を育てるには欠かすことができない。何度も言うように誰もが先端技術の『光と影』を理解し、その上で先端技術の進歩を後押しできる社会こそ日本に必要だ」

 「日本は高齢化社会という世界最先端の課題を抱えてもいる。ロボットやAIを最も必要とし、実証で育てる場もある。ここを生かすべきだろう」

(聞き手=石橋弘彰)
【略歴】
本田幸夫(ほんだ・ゆきお)=大阪工業大学教授。80年(昭55)神戸大工卒、同年日本電装(現デンソー)入社。89年松下電器産業(現パナソニック)入社。モータ社最高技術責任者(CTO)、本社R&D部門ロボット事業推進センター長などを経て、13年から大阪工大教授。ベンチャー企業アルボットの社長も兼務。大阪府出身、60歳。
※『人類なら知っておきたい、「人工知能」の今と未来の話』(発行・PHP研究所)

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

「AIという言葉にだまされない」という言葉が印象的。人工知能が生活に入ってくると、既存の法制度で今まで定性的に人間が納得していたものに、定量的なパラメーター設定されていくことも出てくるだろう。その時にパラメーターは誰が決めるのか?法律の条文に見える化されたパラメーターがどんどん入るのか?課題は多い。人間の根本的な倫理に立ち返らざるを得ない問題だろう。創造性の教育も必要だが、倫理教育も必要と感じる。

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