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「鉄道」比率が4割のJR九州、上場後も攻めの経営を貫けるか

今日東証デビュー。車両開発でも反転攻勢、非鉄道事業との相乗効果狙う
「鉄道」比率が4割のJR九州、上場後も攻めの経営を貫けるか

22年度には博多と長崎を結ぶ西九州ルートの開業を予定している九州新幹線

 25日、JR九州の東証1部に上場する。1987年の日本国有鉄道分割民営化時の会社発足から30年近く。悲願だった上場は、JR北海道、JR四国とともに厳しい事業環境にある“3島会社”として初めて。経営の多角化で経営基盤を固めてこぎ着けた。時価総額は4000億円超となり、7月に上場したLINEに続く大型上場として投資家の注目度も高い。

 JRグループの上場は久々で、JR東日本(93年10月)、JR西日本(96年10月)、JR東海(97年10月)に続く4社目。4月の熊本地震で新幹線などに被害があったが、上場の目標スケジュールは変えなかった。

 JR九州の上場が認められた理由の一つに安定した経営基盤がある。16年3月期の連結売上高は前期比5・8%増の3779億円。6期連続の増収で過去最高を記録した。営業利益208億円と経常利益320億円も過去最高だった。

 同社は鉄道事業との相乗効果が出せる駅ビル、マンションなどの沿線開発を進め、地域経済に活力を与えてきた。16年3月期決算は福岡都市圏を中心に展開する分譲マンション「MJR」が好調で、大分駅の駅ビル「JRおおいたシティ」が15年4月に開業した効果もあった。

(鉄道事業との相乗効果を生んでいる大分駅の駅ビル「JRおおいたシティ」)

10年後売上高5000億円へ海外にも視線


 JR九州の事業分野は運輸、建設、駅ビル不動産、流通外食と大きく四つに分類できる。他のJRと特に異なるのは鉄道事業が売り上げに占める割合。東日本と西日本は65%前後、東海は80%近くだが、九州は約4割だ。

 JR九州の青柳俊彦社長は「鉄道事業だけでは(経営を)存続させることは難しい」と九州の事業環境をみている。赤字のローカル線を多く抱え鉄道事業の収支は常に厳しい。「鉄道事業の収支改善は永遠の課題」(青柳社長)だ。

 厳しい鉄道事業を補うため、非鉄道事業に挑戦して多角化を進めた。博多と韓国・釜山を結ぶ船舶事業に乗り出し、苦境にあった外食事業は再建を果たした。

 チャレンジ精神を持ち、実力も付けてきた。「常に鉄道と相乗効果を生む事業を展開し、グループ全体で発展した」(同)。グループ企業は36社を数え、農業法人もある。

 発足時は売り上げに占める非鉄道事業の割合は2割程度だった。16年3月期は約6割を占めるまでに成長した。非鉄道部門がJR九州を支えてきたといっても過言ではない。

 不動産関係では現在、駅周辺が活気づく。博多駅前に4月、オフィスビル「JRJP博多ビル」が開業。九州各地の駅ビルも業績を伸ばす。その中心である「JR博多シティ」は、開業5年の16年3月期に売上高が1000億円を突破。駅前広場やビルのホールを使ったイベントの効果もあり入館者数は約6750万人にのぼった。

 外食事業も堅調だ。JR九州フードサービス(福岡市博多区)は国内外に70店舗以上を展開。東京や中国・上海市にも進出している。JR九州のブランドを前面に打ち出し、東南アジアなど海外にも目を向けている。10年後のグループ全体の売り上げ目標5000億円に向け、非鉄道事業の厚みを増していく。


訪日客増えるも人口減少に課題


 鉄道事業にも攻めの姿勢が見える。その代表で人気なのが「D&S列車(デザインアンドストーリー列車)」と呼ぶ観光列車。海外でも知られる「ななつ星in九州」を筆頭に現在10路線を運行する。15年度の10路線合わせた利用者数は約76万人で、前年度比40%増の勢いを見せた。

 ただ熊本地震の影響は残っており、鉄道事業における中長距離収入は前年実績割れが続いている。「九州ふっこう割」などを生かした観光誘致に九州一丸で取り組んでおり、今後どれだけ挽回できるかが試される。

 特に注目すべきは平均乗車効率。宮崎県内を走る特急「海幸(うみさち)山幸(やまさち)」は約89%。熊本の特急「SL人吉」は約84%に達する。その押し上げ要因の一つは訪日外国人観光客の増加だ。国内客が少ない平日に多くの外国人旅行者が利用している。

 鉄道事業では今後もD&S列車や訪日外国人観光客の需要は伸びる。だが九州で進む人口減少への対応や効率的運営、収支改善に向けた課題は山積している。そんな課題へのチャレンジとして鉄道事業と非鉄道事業の相乗効果を生み出すことが期待される。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
もともと豊富な観光資源に、自動車や半導体など産業基盤も充実。地理的にもアジアに目を向けやすく成長のポテンシャルは相当大きい。

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