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「村田製作所・東光」連合、融合へいよいよ動き出す―部品業界は戦々恐々?

外資系顧客の販売権を村田に譲渡、真の狙いは車載向け拡大か
「村田製作所・東光」連合、融合へいよいよ動き出す―部品業界は戦々恐々?

「今後2―3年で我々は大きく化ける」(山内・東光社長)

 東光は2015年度から、親会社である村田製作所の販路を本格的に活用した部品の拡販に乗り出す。4月から順次、外資系顧客に対する部品の販売権を、村田とその子会社に譲渡することを決定。今後、東光は村田の営業を支援しながら、開拓余地がある中国のスマートフォンメーカーや自動車関連企業に金属コイルといった高機能部品を効率的に売り込み、収益を伸ばす。16年度を最終年度とする3カ年中期経営計画の目標達成を確実にする。

 【現在の何十倍】
 村田製作所に対する販売権の譲渡額は総額で24億円になる見通し。東光の営業担当は国内外で約180人おり、このうちこれまで外資系顧客の営業担当だった社員は村田の営業担当に同行するなどして営業支援を行う。村田は中国、北米、欧州などに営業拠点網を持ち充実している。「(村田は)現在の何十倍もの販路を持つ。これを活用しない理由はない」。村田出身で東光の山内公則社長はかねてこう説明し、村田と営業面のシナジー創出に向けて準備を進めていた。

 【車載事業柱に】
 販売権譲渡の最大の狙いは、中国スマホメーカー向けの部品拡販だ。東光はスマホ向けの金属コイルで業界首位を走っており、米アップルや韓国サムスン電子など大手スマホメーカー向けに部品を供給していると見られる。その一方で、中国スマホメーカーや台湾の半導体メーカー向けの売り込みは弱かった。中国メーカーと太いパイプを持つ村田の販路を使えば新規顧客を効率的に開拓し、収益につながる公算が大きい。

 もう一つの狙いは、注力する車載向け部品事業の早期拡大だ。東光は車載事業をスマホ事業と並ぶ収益の柱にするべく、高耐熱の金属コイルや小型のキーレスエントリーシステム向け送受信コイルといった製品を相次いで開発。ただ、車載向けはカーナビゲーションシステム向けなどで実績はあるものの、参入は比較的後発で新市場を1社単独で開拓するのは限度があった。
 
 【設備投資を2.8倍】
 東光は14年度からスタートした中期経営計画で、16年度に売上高を440億円(14年度は336億円)、営業利益率を12%(同8・2%)と設定した。15年度の設備投資額はスマホ向けの部品需要拡大を見通し、前年度比2・8倍の約59億円と大幅に増やす計画を掲げている。
 
 村田とは14年3月に連結子会社になった後、これまでに小型・薄型の金属コイル「DFES」の共同開発や、村田が使う受注管理システムを導入するといった戦略を打ち出してきた。東光は高機能部品の研究開発や受注管理に加えて、今回、営業統合に踏み切ることにより中計の達成はもちろん、成長を加速させて競争力向上につなげる考えだ。

(日刊工業新聞2015年04月09日 電機・電子部品・情報・通信面)

 東光=山内公則社長インタビュー(2月掲載)
 ―主力のスマホ向け部品事業の戦略は。
 「中国スマホ向けに部品を拡販していく。中国メーカーは自国だけでなくインドや新興国に端末を輸出し始めるなど勢力を強めており、収益を上げるためにカバーする必要がある。当社製は中国大手の大半に採用されているものの、まだ提案しきれていない中堅メーカーがあり、営業強化で収益拡大につなげたい」

 ―親会社である村田製作所との連携は。
 「2015年度は営業、開発両面で本格的にシナジーを創出できる体制を整える。営業面では村田の強力な営業網を使って、スマホや自動車向けの部品を拡販する。製品面では14年度に共同開発した小型・低背の金属パワーインダクター(コイル)の量産を始める予定。次世代品の共同開発にも着手している。このほか受注管理や工場管理のノウハウも導入する」

 ―注力する車載向け部品の受注状況は。
 「キーレスエントリーシステム向けのアンテナコイルが好調でけん引役になっている。電子制御ユニット用金属コイルは、これから本格的に車に搭載されるためファーストベンダーになれる商機がある。180度Cといった高耐熱品をそろえている強みを生かし、採用につなげる」

 ―コイル生産計画は。
 「村田との連携効果で中国スマホ向けに部品の拡販が進むと見ており、年内に月5億個(現状は月4億個)に引き上げる。最近は台湾メーカーとの競争が激しくなっているがスマホ用の金属コイルでは当社がトップを走っている。安定供給で競争力をさらに高める」

 【記者の目/“大化け”へ重要な年】
 村田製作所の連結子会社になり3月末で丸1年。村田とのシナジー創出を求める市場の声が高まっている。特に主力のスマホ向けは、村田の営業網を活用し、中国スマホ向けに部品を拡販できるかが今後の収益拡大のカギを握る。山内社長は「(村田との連携で)今後2―3年で我々は大きく化ける」と強調しており、15年はその真価が問われる最初の重要な年になる。
(聞き手=下氏香菜子)
2015年02月16日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
村田はいろいろ布石を打つのがうまい。外資をM&Aしてコントロールできないより、よほど堅実で、成果が見込める。

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