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ゴーン降臨もシナジー効果1000億円は必ずしも多くない

三菱自・ゴーン会長で購買以外のコスト削減にどう踏み込むか
 三菱自動車を事実上傘下に収めた日産自動車。三菱自の会長に就くカルロス・ゴーン日産社長が三菱自の社長職を続投する益子修会長兼社長と連携。不正問題で信頼が失墜した三菱自の再建を目指す。社長人事はゴーン氏が辞意を固めていた益子氏を慰留する異例の事態となった。仏ルノー・日産連合のトップを兼務するゴーン氏の提携戦略と、かつて日産をV字回復させた手腕が注目される。

 「益子さんには厳しいタスクが待っている。会長として支援し、助言する」。20日に開いた会見でゴーン氏は三菱自会長職の役割をこう説明した。1999年、ゴーン氏は経営危機に瀕していた日産に仏ルノーから送り込まれ、工場閉鎖や調達コストのカットといった改革を進め、業績のV字回復を果たした。「瀕死から抜け出した当時の経験を踏まえて三菱自の再生を支援する道を選んだ」(ゴーン氏)。

 不祥事を繰り返してきた三菱自の再建には組織改革は不可避だ。日産はすでに元副社長の山下光彦氏を三菱自に派遣し、不正の舞台となった開発部門の改革に着手している。ゴーン次期会長は「開発だけでなく組織全体の改革に目を光らせる」(日産幹部)。


 一方でゴーン氏は日産の再建と同時に、共同購買や開発の分担でルノー日産連合のシナジーを追求してきた。15年の両社のシナジー効果は43億ユーロにのぼるという。10年には独ダイムラーと資本提携し、ロシア最大手アフトワズも傘下に収めて連合の勢力も拡大。外交手腕を巧みに発揮した連合のシナジー追求と勢力拡大はゴーン流経営の神髄と言える。

 「私は2社のトップも務める。連合内の連携を円滑化できる」。ゴーン氏は会見でこうも強調した。新たに三菱自を連合に迎え入れるのにあたって、ルノー、日産、三菱自の3社のトップを兼務するのは連合が享受できるシナジーを引き出す狙いもある。

 自動車業界は、これまでの環境や低コスト技術に加え、自動運転、つながる車、シェアリングといった新分野が急速に台頭している。

 ルノー・日産連合は三菱自への出資で、年販1000万台規模のトヨタ、米ゼネラルモーターズ、独フォルクスワーゲンの仲間入りをすることになるが、ITや通信、輸送サービスなど異業種も入り交じる競争環境は変化が速い。自らが会長として三菱自に乗り込むゴーン氏には、変革を迫られる自動車業界の力学が働いている。
日刊工業新聞2016年10年21日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
算定されたシナジー効果は両社合計で18/3期に490億円、19/3期1,000億円。ざっと、両社売上高合計に対する比率は18/3期が0.4%、19/3期0.7%となり、必ずしも高い数値とは言えない。この効果の過半は購買シナジーであろう。控えめな前提だ。日産-ルノーのアライアンスでは、ゴーンは日産の大規模な構造改革を打ち出し、この構造改革効果は当初算定のシナジー効果を大幅に超えるこえ、V字回復を実現する原動力となった。大幅なスリム化を果たしている三菱自工だが、開発、国内販売領域には大きな改革余地がある。これを引き出せるか否か、新経営陣の力量が試される。構造改革効果を含む次期中期経営計画に注目している。

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