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“IoT工場”のデータをどう生かす?マツダに見る「最後は人間力」

多関節ロボットの長寿命化、開発したのは設備保全の担当者だった
“IoT工場”のデータをどう生かす?マツダに見る「最後は人間力」

マツダの宇品工場の産業用ロボット

 IoT(モノのインターネット)やビッグデータという言葉を、毎日のように紙面で目にするようになった。さまざまな機器につけたセンサーから大量のデータを収集し、システム上で管理する技術だが、あくまでこれはツールに過ぎない。重要なのはどう使いこなすかだ。何のために、どんなデータをどう集めるか。そこから改善策や新しいサービスを生み出す知識や構想の力が問われる。

 ひとつの例を示そう。マツダが自動車工場の溶接ラインで使う多関節ロボットを、長寿命化する技術を開発した。ロボットの停止時間が長くなる要因になっていた減速機を徹底的に研究し、軸受やシャフトなどの要素部品を置き換えて従来の1・6倍から2・5倍長持ちするようにしたという。

 興味深いのは、この技術を開発したのが設備保全の担当者であったことだ。さらに、この技術開発によって減速機の寿命があとどれくらいかを予測できるようになったことにも驚かされる。ロボットのモーターの負荷の状況と、減速機の潤滑油の鉄粉濃度の分析によって、工場内に数多くあるロボットのうち、次にどの減速機が壊れるかが分かるようになった。

 専門のロボットの設計技術者ではなく、現場の担当者が、日々の保全業務にとどまらず、改善活動の中から高度な予防保全の手法を生み出したわけだ。これこそ現場力のレベルの高さといえよう。

 また、ロボットの寿命低下につながる現象を“見える化”したことも重要だ。今後さらにロボットの管理を効率化しようと思えば、鉄粉濃度を自動測定することでシステム化できる。逆に、こうした“からくり”が分かっていなければ、どんな高価なシステムを導入しても管理はできない。

 今後、IoT技術はさらに安価になって標準化も進むだろう。だが、やみくもに大量のデータを集めても、その活用の仕方が分からなければ新たな価値につながらない。IoT時代にあっても、企業の競争力を決めるのはやはり人間力である。
日刊工業新聞2016年10月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 マツダの成長を支えてきたのが生産と開発部門の連携による「モノ造り革新」。生産現場から得られる加工条件などのさまざまなデータをサーバーで管理し分析・活用し、よりよいモノづくりにつなげている。エンジンの生産では組み立てラインのデータを前工程の機械加工にフィードバッグし、機械加工の精度とエンジンの性能の関係を明らかにして性能向上を図っている。開発だけでなく生産現場も顧客に価値を提供できるように、という意識改革が根付き始めている。今後はこれまでの生産と開発部門の連携だけでなく、調達部門を含めて、グローバルでの部品や材料の調達の最適化が課題になる。

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