東北で始まったもう一つのオリンピック。ここにも復興の姿がある!
技能五輪の全国大会が山形で開幕。日本のモノづくりの未来が担う1318人
「第54回技能五輪全国大会」が21日、山形県で開幕した。1318人の若手技能者が、41職種で熱戦を繰り広げる。今回のテーマは「輝け!ものづくり東北の未来」。東日本大震災後初の東北地方での開催で、東北のモノづくりの復興と発展をアピールする。
同日、山形県総合運動公園(山形県天童市)で開かれた開会式では、大会会長を務める山形県の吉村美栄子知事は「選手の皆さまにとって、山形での経験が未来のモノづくりの原動力になると確信する」とあいさつ。技術委員長を務める職業能力開発総合大学校の岡部眞幸教授が「この場に立っていることに自信を持ち、競技に全力で挑戦してほしい」とエールを送った。
2016年の技能五輪全国大会が21日から4日間の日程で山形県内で開催される。競技職種は41種目で、全国から約1300人の選手が参加。このうち山形県からは28職種113人が出場する。花形とされる機械系や電子技術系競技は例年、大手メーカーの選手が優勝する中で、開催県・山形の選手は“風穴”を開けるため追い込みに熱が入っている。(山形支局長・大矢修一)
「手が届けばうれしい。壁は高いが入賞に向けて本人も頑張っている。良いところまできている」。洗浄機メーカーの管製作所(山形県天童市)の管信良志社長は、社員の活躍に期待を寄せる。同社は昨年に続き、フライス盤競技に1人が出場する。
出場選手の斎藤大嗣さんは13年に入社以来、技能五輪を目指し日々励んできた。4月には技能五輪専門の指導者と契約を結び、これまで月に1週間程度の特訓を重ねてきた。10月は直前まで10日間の集中特訓で本番に挑む。管社長は「(本人も)山形大会が集大成になる。中小企業の意気込みを見てもらいたい」と本気で“入賞”を意識する。
(斉藤選手)
金属加工を基盤とするグローバルマシーン(同庄内町)は、今回初めて旋盤競技に選手1人が参加する。激しい予選を突破し、相馬佑紀さんが本番への切符を手にした。山形県からは唯一の出場だ。菅原勝安社長は「大手メーカーの選手がひしめく中で、まずは課題をしっかり仕上げてほしい」と、チャレンジ精神で挑んでほしいと力を込める。
昨年は予選突破を果たせなかったが、今回は本番の競技で使う旋盤の導入をはじめ、人的ネットワーク活用による練習強化など、入念な準備を重ねてきた。相馬さんは「しっかりと本番を迎えたい」と気負いはない。技能五輪を踏まえ、菅原社長は「東北でも有数の技能者集団になれるように頑張りたい」と先を見つめている。
工作機械メーカーのミクロン精密は、2人一組で取り組むメカトロニクス競技に2チーム(4人)が出場する。会社として昨年1チームが初めて出場。地元開催であり、活動を今後も継続、拡大していくことから出場チーム数を増やした。昨年は全体の真ん中ぐらいの順位だったが「今回はそれ以上を目指す」と吉野靖取締役生産本部長は意気込む。
今年は、ほぼ技能五輪専門に練習を重ねてきた。メカトロニクスに出場する大手メーカーとの交流会に参加するなど、県外での特訓にも励んできた。最近ではメンタル面を鍛えるため、本社工場の生産現場に練習場所をつくり、ざわついた雰囲気での追い込みに取り組んでいる。
ミクロン精密は技能五輪への出場により、作業の効率化の考え方を現場に浸透させる人材育成に今後も力を入れていく考えだ。
“母なる川”として山形県民に愛される最上川。県南の米沢市から北に流れ、県北西部の酒田市で日本海に注ぐ。そそりたつのは県中央部の山岳信仰の聖地・月山。これに県の木である「さくらんぼ」を融合した。
21日から4日間、山形県を会場に開かれる第54回技能五輪全国大会のメダルのデザインだ。最上川と月山の図柄を、外周部の「YAMAGATA2016」の文字とさくらんぼの果実マークが取り囲む。
基材はブロンズ(青銅)。約950年の歴史を持つと言われる「山形鋳物」の鋳造技術を生かし、文字と絵柄を一体成形した。金賞のメダルは伝統工芸「山形仏壇」の職人が金箔(きんぱく)を施し、銀賞には地元の中小企業のメッキ加工技術を採用した。
主催側は、銅賞とそれに準ずる敢闘賞を含めて計454個のメダルを準備。また技能五輪に続いて開く第36回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)の山形大会でも、同じデザインのメダルを入賞者に授与する。
東日本大震災から5年。山形大会は東北のモノづくり力を発信する場でもある。スローガンは「輝け!ものづくり東北の未来」。山形生まれのメダルは、どの地域の選手の胸に輝くのだろうか。活躍を見守りたい。
厚生労働省は13日、2020年度技能五輪全国大会の開催地を、愛知県に内定したと発表した。19年度も同県に内定しており、2年続けて同じ県で開催するのは初めて。14年度大会を開いた実績を持つ同県は、自動車や機械、航空機など製造業が集積する上、選手層の厚さや実施体制の盤石さが奏功した。
同省の宮野甚一職業能力開発局長が、内定通知書を愛知県の森岡仙太副知事(同右)に手渡した。森岡副知事は「モノづくり日本の底力を世界にアピールし、若い人に技能の大事さを感じ取ってもらうためにも、愛知県が頑張りたい」と抱負を語った。技能五輪は本年度は21―24日に山形県で開催予定。17年度は栃木県、18年度は沖縄県で開催する。
同日、山形県総合運動公園(山形県天童市)で開かれた開会式では、大会会長を務める山形県の吉村美栄子知事は「選手の皆さまにとって、山形での経験が未来のモノづくりの原動力になると確信する」とあいさつ。技術委員長を務める職業能力開発総合大学校の岡部眞幸教授が「この場に立っていることに自信を持ち、競技に全力で挑戦してほしい」とエールを送った。
地元・山形の中小は常連の大手企業に風穴を開けるか
2016年の技能五輪全国大会が21日から4日間の日程で山形県内で開催される。競技職種は41種目で、全国から約1300人の選手が参加。このうち山形県からは28職種113人が出場する。花形とされる機械系や電子技術系競技は例年、大手メーカーの選手が優勝する中で、開催県・山形の選手は“風穴”を開けるため追い込みに熱が入っている。(山形支局長・大矢修一)
「手が届けばうれしい。壁は高いが入賞に向けて本人も頑張っている。良いところまできている」。洗浄機メーカーの管製作所(山形県天童市)の管信良志社長は、社員の活躍に期待を寄せる。同社は昨年に続き、フライス盤競技に1人が出場する。
出場選手の斎藤大嗣さんは13年に入社以来、技能五輪を目指し日々励んできた。4月には技能五輪専門の指導者と契約を結び、これまで月に1週間程度の特訓を重ねてきた。10月は直前まで10日間の集中特訓で本番に挑む。管社長は「(本人も)山形大会が集大成になる。中小企業の意気込みを見てもらいたい」と本気で“入賞”を意識する。
(斉藤選手)
金属加工を基盤とするグローバルマシーン(同庄内町)は、今回初めて旋盤競技に選手1人が参加する。激しい予選を突破し、相馬佑紀さんが本番への切符を手にした。山形県からは唯一の出場だ。菅原勝安社長は「大手メーカーの選手がひしめく中で、まずは課題をしっかり仕上げてほしい」と、チャレンジ精神で挑んでほしいと力を込める。
昨年は予選突破を果たせなかったが、今回は本番の競技で使う旋盤の導入をはじめ、人的ネットワーク活用による練習強化など、入念な準備を重ねてきた。相馬さんは「しっかりと本番を迎えたい」と気負いはない。技能五輪を踏まえ、菅原社長は「東北でも有数の技能者集団になれるように頑張りたい」と先を見つめている。
工作機械メーカーのミクロン精密は、2人一組で取り組むメカトロニクス競技に2チーム(4人)が出場する。会社として昨年1チームが初めて出場。地元開催であり、活動を今後も継続、拡大していくことから出場チーム数を増やした。昨年は全体の真ん中ぐらいの順位だったが「今回はそれ以上を目指す」と吉野靖取締役生産本部長は意気込む。
今年は、ほぼ技能五輪専門に練習を重ねてきた。メカトロニクスに出場する大手メーカーとの交流会に参加するなど、県外での特訓にも励んできた。最近ではメンタル面を鍛えるため、本社工場の生産現場に練習場所をつくり、ざわついた雰囲気での追い込みに取り組んでいる。
ミクロン精密は技能五輪への出場により、作業の効率化の考え方を現場に浸透させる人材育成に今後も力を入れていく考えだ。
山形生まれのメダル
“母なる川”として山形県民に愛される最上川。県南の米沢市から北に流れ、県北西部の酒田市で日本海に注ぐ。そそりたつのは県中央部の山岳信仰の聖地・月山。これに県の木である「さくらんぼ」を融合した。
21日から4日間、山形県を会場に開かれる第54回技能五輪全国大会のメダルのデザインだ。最上川と月山の図柄を、外周部の「YAMAGATA2016」の文字とさくらんぼの果実マークが取り囲む。
基材はブロンズ(青銅)。約950年の歴史を持つと言われる「山形鋳物」の鋳造技術を生かし、文字と絵柄を一体成形した。金賞のメダルは伝統工芸「山形仏壇」の職人が金箔(きんぱく)を施し、銀賞には地元の中小企業のメッキ加工技術を採用した。
主催側は、銅賞とそれに準ずる敢闘賞を含めて計454個のメダルを準備。また技能五輪に続いて開く第36回全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)の山形大会でも、同じデザインのメダルを入賞者に授与する。
東日本大震災から5年。山形大会は東北のモノづくり力を発信する場でもある。スローガンは「輝け!ものづくり東北の未来」。山形生まれのメダルは、どの地域の選手の胸に輝くのだろうか。活躍を見守りたい。
19年、20年は2年連続で愛知開催
厚生労働省は13日、2020年度技能五輪全国大会の開催地を、愛知県に内定したと発表した。19年度も同県に内定しており、2年続けて同じ県で開催するのは初めて。14年度大会を開いた実績を持つ同県は、自動車や機械、航空機など製造業が集積する上、選手層の厚さや実施体制の盤石さが奏功した。
同省の宮野甚一職業能力開発局長が、内定通知書を愛知県の森岡仙太副知事(同右)に手渡した。森岡副知事は「モノづくり日本の底力を世界にアピールし、若い人に技能の大事さを感じ取ってもらうためにも、愛知県が頑張りたい」と抱負を語った。技能五輪は本年度は21―24日に山形県で開催予定。17年度は栃木県、18年度は沖縄県で開催する。
日刊工業新聞2016年10月21日