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中国メーカーを切り崩せるか。監視カメラ市場、日本勢は“賢さ”で挑む

日立やキヤノンなど、機器販売からソリューションへの転換急ぐ
中国メーカーを切り崩せるか。監視カメラ市場、日本勢は“賢さ”で挑む

キヤノンが買収したアクシスと共同開発した第1弾の監視カメラ

 日立製作所キヤノンなど国内の監視カメラ各社は、機器販売からソリューションビジネスへ転換を加速する。高画質化や映像解析機能の拡充などで、大規模監視や交通機関など用途ごとのソリューションを用意。技術補完のため企業間連携を増やす。監視カメラ市場は中国企業が上位を占めるが、日本勢はより効率的な監視や防犯以外に利用できる“賢い”カメラで巻き返しを図る。

 “賢さ”のカギは、映像解析によって顔や特定の行動などを抽出する技術だ。日立傘下の日立産業制御ソリューションズ(茨城県日立市)は、2017年度にもカメラ設置後に画像分析などの内蔵ソフトを更新できるネットワークカメラを市場投入する。購入者はソフト更新によって最新技術を使える。日立側はハードウエアを共通化して開発コストを低減できる。

 例えば、工場や物流倉庫などで映像解析をもとに改善活動を行う場合、活動の進捗(しんちょく)に応じて定期的な解析内容の変更も容易になる。ソフトを変更できるカメラを使い、顧客ごとのソリューション提案を後押しする。

 また、日立産業制御ソリュは、特殊用途の監視カメラの得意な日立国際電気との間で、開発ロードマップを統一した。重複開発を避けて効率化する。営業面では、日立グループ内に多様な業種へ窓口を持つ強みを生かす。

 キヤノンは、買収した監視カメラ大手のアクシス(スウェーデン)や、ビデオ管理ソフト大手のマイルストーンシステムズ(デンマーク)の、第三者と連携する仕組みを活用する。アクシスのソフトウエアプラットフォームは、第三者の映像解析ソフトなども追加できる。キヤノンは、グループの技術資産を活用して次の機種を開発する。

 このほかに日本IBMや富士通などと、広域監視やマーケティングといった目的に合わせたソリューションを開発している。「将来は、カメラ全体を管理する上位システムとして、総合セキュリティーシステムも視野に入れたい」(山田昌敬常務執行役員)と話す。

 JVCケンウッドは、4月に設立した新会社「JVCケンウッド・公共産業システム」で、機器販売から顧客のニーズに合わせたシステム提供へ転換する。「他社の製品もこだわらずに取り扱って、ワンストップで供給する」(早川勉JVCケンウッド・公共産業システム取締役)。

 ソニーは、NECと連携して低解像度画像から人物の顔を見つける技術を10月中に商品化する。カメラ1台の顔の認識率は低いが、複数台を連携させて認識率を上げる。

 国内最大手のパナソニックも、監視カメラや映像解析機能の豊富なラインアップを生かし、顧客業界別のソリューション開発に注力する。米警察向けにはウエアラブルカメラを訴求し、複数の警察署へ試験導入を始めた。このほかに、鉄道システム全般を手がける企業との提携を生かし、監視カメラについてもニーズを吸い上げる。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年10月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
監視カメラはデジタル化により、映像を直接視認するだけでなく、今後は加工や分析し利用するビジネスの拡大が見込まれそう。

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