「やんばる」国立公園指定を支えたある企業

保全支援15年、リコーの活動結実

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地元に根付いた野鳥の観察会
 リコーが2001年から生態系の保全活動を支援する沖縄北部地域「やんばる」が国立公園に登録された。環境保全活動を支援する助成制度は数年で終わることが多いが、リコーの支援は15年続き、地域住民に保全意識が根付いた。息の長い支援の集大成が33番目の国立公園として実を結んだ。

 「やんばる」とは「山々が連なり森が広がる地域」を意味する。環境省から国立公園に指定された沖縄本島北部には、広大な亜熱帯照葉樹林が広がる。同省ホームページによると現地の面積は日本全体の0・1%と狭いが、日本で確認されている鳥類の半分、在来カエルの4分の1の種が生息する。1000種を超える植物も確認されており、“生物多様性の宝庫”だ。

やんばるの生態系保全に取り組むNPO法人「やんばる森のトラスト」の市田豊子さんは、30年前の森を「開発され、ズタズタだった」と振り返る。そして「部外者が自然を守れ、守れと言ってもだめ。地域と一緒に取り組もう」と移住した。

 地元に入り、住民に森の貴重さを理解してもらう活動を続けていた15年前に、リコーと出会った。同社は99年度から、土地固有の生物や住民生活を守る「森林生態系保全プロジェクト」を展開している。活動を支える助成金は、毎年の利益の一部を積み立てた「社会貢献積立金」から拠出している。

 市田さんらはリコーからの助成金でやんばるに3ヘクタールの土地を購入。その場所を保護区とし、活動の象徴とした。その後もリコーから助成を受けて、地域での環境教育を充実させた。親子二代で小学生時代に鳥の観察を体験した住民も珍しくなく「村の雰囲気が変わった」(市田さん)。

 環境団体を支援する助成制度には3年単位が多く、1年ごとに報告する制度も少なくない。市田さんの夫の市田則孝さんは「リコーさんには、たとえ計画通りでなくても次年度も助成していただいた。長期支援はありがたかった」と喜ぶ。

 リコーにも支援が広がった。リコーの社員が現地にチョウの食草を植えた。

 その縁で、無農薬で栽培したため形が崩れたやんばる産シークワーサーが、リコー本社がある東京・銀座で売られるようになった。リコーの活動を知った飲食店が扱っているという。息の長い助成が、都会とやんばるを結びつけた。

 企業の社会貢献は本業との関係が薄く、効果もはっきりしない時がある。リコーは継続的な支援で地域に必要とされる貢献になれば結果が出ることを証明した。
(文=松木喬)

日刊工業新聞2016年10月20日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

9月に国立公園に指定されました。国立公園は全国に33しかありません。これまで景勝地の指定が多かったと思いますが、やんばるのように人の手で一度、開発された森が国立公園になるのは珍しいのでは。快挙に近いと思います。生態系の復活には時間がかかります。リコーの支援は、赤字になったらやめるような半端な社会貢献ではなかったので、国立公園にまでなったのだと思います。

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