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「整形外科」「形成外科」「美容外科」の違い知ってる?

“見た目”か“機能”か
 今日の話題は、このコラムをお読みになっている皆さんご自身というより、むしろ奥さま、あるいはお嬢さまが興味をお持ちになる内容かもしれません。

 今、ネット上の検索サイトで「整形外科」と検索すると、上から美容整形なら〇〇外科、△△美容形成外科、美容整形は××美容外科…と画面に並びます。同じ外科でも整形と形成、知っていそうで案外知られていないこれらの違いについて、お話ししたいと思います。

 私の専門は整形外科です。初めてお目にかかる方に自己紹介すると、必ず何人かの方から「あぁ、では美容のお仕事ですね」と言葉が返ってきます。私の容姿風貌から察して頂ければそのような返答はないはずなのですが。

 整形外科と形成外科、よく似た響きのため混同されている二つの学問ですが、対象となる患者さんは全く異なります。公益社団法人日本整形外科学会のホームページに、「一般の方へ。よくある質問」というコーナーがあり、そのうち「整形外科と形成外科は似ている響きですが、どのように違うのでしょうか?」という欄で両者の違いが分かりやすく解説されています。

 要約しますと、整形外科は身体を自分の意思で動かすための運動機能を治療する外科で、一方の形成外科は異常を伴う身体の見た目を治療する外科、と言い表すことができます。

 形成外科から発展した美容外科は、フェイスリフトや脂肪吸引、二重まぶたや鼻を高くする手術、最近よく耳にするプチ整形など機能的には何の異常もない健康な部位を治療する分野で、形成外科とは違い健康保険の適用外になります。

 かつて日本でまだ診療科が今日のように細分化されていなかった時代に、整形外科でも見た目を治す領域の治療が行われていたこと、学問として形成外科学が確立された後も、「形成外科」や「美容外科」を行う医師たちが、形を整えることを意味することばを含む整形外科を名乗っていたこと、このような経緯に加えて、なんと言っても二つのことばの音が同じ組み合わせであることが大きな原因と考えられます。

 とはいえ、現在も「形成外科」や「美容外科」が「整形外科」として使われているのは、明らかな誤りです。

 それぞれの違いがお分かりいただけたでしょうか。整形外科は、あくまでも見た目の治療ではなく、骨、関節、筋肉、神経といった運動機能障害を治療する分野です。日常生活で感じる腰や膝の痛み、ゴルフで肩、肘や腕に違和感を覚えた時は運動器のスペシャリストである整形外科へ相談しましょう。
(文=高野病院 院長 高野健一郎)
日刊工業新聞2016年10月21日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
先日包丁で手を深く切った時、初めて形成外科にかかりました。病院を探す際に整形外科と形成外科の違いが分からず混乱した覚えがあります。「整形」という言葉がイコール美容のために見た目を整えるような手術の総称として認知されていることも、混乱を招く要因となっています。

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