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大阪都構想、今日投票−地元産業界も注視

賛成が1票でも上回れば、全国初の政令指定市廃止と2017年4月に特別区移行へ
大阪都構想、今日投票−地元産業界も注視

大阪市役所に登場した住民投票を呼びかける大型ポスター

 大阪市を廃止して五つの特別区を設ける「大阪都構想」の可否を問う住民投票が、17日に実施される。住民投票で特別区設置への賛成が多数になると、大阪都構想が実現に近づくことになる。支持を求める賛成派、反対派双方の活動が投票直前まで熱を帯びた。住民投票の結果によってはインフラ整備や成長戦略にも影響を及ぼすと見られるだけに、地元産業界も注視している。

 【住民サービスに】
 大阪都構想では大阪市を特別区に再編するとともに、「大阪府はインフラ整備や成長戦略などの広域行政を担当し、特別区は小・中学校などの住民サービスに特化」し、「水道や国民健康保険など区ごとに分けると非効率な業務は、特別区で作る『一部事務組合』で共同運営する」としている。さらに「大阪市の財産や負債は府、特別区、一部事務組合に一定の割合で引き継がれ、大阪市職員も同様に振り分けられ」た上で、「これらを2017年4月1日に移行する」というのが骨子だ。

 大阪都構想は10年当時大阪府知事だった橋下徹氏(現大阪市長)と、平松邦夫前大阪市長による水道事業統合を巡る対立にさかのぼる。これが発端で橋下氏は地域政党を設立し、知事を辞めて市長選に立候補、平松前市長を破った。知事には府議の松井一郎氏(現知事)が当選した。12年に議員立法で大都市地域特別区設置法が成立し、15年3月の府市両議会で可決、これにより今回の住民投票の実施が決まった。

 【実際の効果は】
 住民投票の結果、賛成となれば15年8月頃から町名(素案)の公表や部局ごとの組織・定数などが仮決定する。16年4月までに新庁舎が必要な区で候補地を絞り、16年8月ころ新町名を決める。17年4月の特別区移行後に新たな区長・区議選挙を実施する。中小企業関連では、中小支援機関である大阪市立工業研究所は大阪府立産業技術総合研究所と、大阪市都市型産業振興センターは、大阪産業振興機構と統合する。反対なら、大阪市はこれまで通り存続する。

 賛成派は「二重行政が解消。選挙で選ばれた特別区長で住民サービスが充実し、行政改革などで17年間に2700億円以上の効果がある」とする。一方、反対派は「無駄な二重行政はなく話し合いで十分解決できる。大阪市の規模縮小で住民サービスは低下し、実際の効果は年1億円」などと一歩も引かない。

 【メリット不明確】
 地元産業界からは「市民や企業のメリットが不明確。制度論よりビジョンや都市計画を」(佐藤茂雄大阪商工会議所会頭)、「各立場で都構想について市民にわかりやすい議論を」(森詳介関西経済連合会会長)といった意見が出る。また、「大阪の将来の望ましい統治機構のあり方と根拠を明確に」(加藤貞男関西経済同友会代表幹事)とより丁寧な説明を求める声もあがる。この住民投票は大阪市民269万人だけでなく、周辺地域や産業界などからも高い関心が寄せられている。
日刊工業新聞2015年05月13日 列島ネット面を一部修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「大阪都」が直接、成長戦略に影響するとは思わない。東京はオリンピック、名古屋はトヨタ、九州はアジア、北海道は観光、大阪は??と良く言われる。活性化のイメージがわかない。余談になるが、一般紙の場合、パナソニックやシャープの記事は大阪版では一面で大きな扱いでも、東京版では経済面でマメ記事の時がよくある。メディアの偏重は、大阪経済の低迷とリンクしている。そんな中で、NHKの朝ドラは、東京制作と大阪制作が1クールごと交互にやっているのは、さすが公共放送。

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