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「日本版インダストリー4.0」は生産現場の"改善"からどこまで広がるのか

IVIプラットフォーム開発へ。IoT導入を簡素化
 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI、理事長=西岡靖之法政大学教授)は、富士通東芝ソフトバンクなどと連携し、IoT(モノのインターネット)の導入を容易にする仕組み「プラットフォーム(PF)」の開発を10月中にも始める。PFにより、企業の内外でデータをつなぐ仕組みを簡単に実現できるようにする。2017年春をめどにPFをまとめ、「日本版第4次産業革命」のモデルの一つとして米国やドイツなど海外にも発信する考えだ。

 IVIが13日、東京都内で開いたシンポジウムで、PFの要件や目指す姿を公開した。PFの対象は、製造現場の効率改善や計画変更、故障予知など8分野。テーマごとに必要な機器やソフトウエアを一式そろえたうえ、データを相互に接続する仕組みをPFとしてまとめる。

 西岡理事長は、PFの指針として「オープンな仕様」と「企業データの所有権はその企業自身に」を掲げた。「囲い込み」や「ロックイン」といった事業モデルとは対極に位置するオープンなモデルを目指す。

(IoT導入の簡素化を強調する西岡理事長)

 IVIは15年6月に設立され、トヨタ自動車日立製作所パナソニックなど大手製造各社が加盟する。16年3月までの短期間で20件のIoT実証事業をまとめた。

 ただ、製造現場の有能な人材による「力業で実現した」(西岡理事長)ため、中小企業に展開しにくくなってしまった。PFによりIoTの導入のハードルを下げる考え。「8割を楽にし、残り2割を(自社の力で)頑張る」(同)とのイメージで当たる。

 具体的には、16年秋以降に第2期の実証を進めながら、それを他の企業も応用できるようPFとして汎用モデルに落とし込んでいく。確立したPFは、システムインテグレーターにあたる「プラットフォーマー」が広く企業に提供する。すでに富士通など10社・5連合がプラットフォーマーの募集に応じた。

 今後はIoT分野の標準システム構成をまとめている米独の有力団体と連携を目指す。国際的にも存在感を高めていく考えだ。
日刊工業新聞2016年10月14日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 製造業の現場領域のIoT化を推進してきたIVIが裾野の拡大に向けたプラットフォーム化によるスマートな工場の展開を加速する方向にシフトし始めた。これまでは一品一様の取り組みに見えていたが、国産のオープンなプラットフォーム整備に期待がかかる。  一方で製造業の中でも生産現場の"改善"主体の取り組みは、欧米が掲げている工場間の繋がりによる国家競争力向上やサービス産業化を伴う新たなビジネスモデル構築と比べると、極めて狭い領域を深く掘り込んだ取り組みだと言わざるを得ない。今後は整備するプラットフォームにより広く製造現場以外に拡張して横展開していくことと、生産性改善やコスト削減で縮小均衡に陥らないための成長策が必要になろう。その領域は日本の製造業が最も苦手とする領域であり、個々の担務する見えている範囲の現場改善ではなし得ない。広い視点への引き上げと生産性を超えた目的への展開が今後の課題だ。

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