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三菱電機、「深層学習」の設計を自動化。昇降機など自社製品に生かす

AIの機器実装が容易に
 三菱電機は、人工知能(AI)の技術であるディープラーニング(深層学習)の構造を自動で設計する技術を開発した。専門知識がなくてもAIを実装した機器を開発でき、AIの開発期間も約12分の1に縮められるという。グループ内の機器開発に採り入れ「2020年にはこの技術を使い開発した機器での売上高100億円を目指す」(三嶋英俊情報技術総合研究所知能情報処理技術部長)としている。

 自動運転車の走行制御や昇降機、産業用ロボット、監視カメラなどあらゆる機器にAIを実装し性能を高度化する動きがメーカー各社で進む。だが機器の専門家とAIの技術者がすり合わせをしながら試行錯誤で開発する必要がある。

 今回の技術は、センサーからの各種データを自動設計アルゴリズムに入力し、何をさせるか目的を与えると、深層学習の構造であるノードや層を自動で生成する。機器の専門家がAIの知識がなくても容易に機器へ実装でき、AIの開発期間も数分から数時間程度になるという。

 同社情報技術総合研究所の福島邦彦主席研究員が深層学習での構造生成技術である「AiSルール」を応用し、深層学習の自動生成を可能にした。今後、グループ内で実際の機器開発に適用し技術を磨き上げる。
日刊工業新聞2016年10月12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 三菱電機の「情報技術総合研究所」は同社の研究所の中でも最もホットなテーマを扱っている。人工衛星や光通信、セキュリティーなど。最近の研究のキーワードは“コンパクトさ”。三菱電機は組み込み機器に強く、機器に搭載できるよう技術を小型化することで、他社と差別化している。自動車やロボットに組み込めるコンパクトなAIは、最新の主な成果の一つ。自動運転の実用化に向け、ディープラーニングを使った不注意運転の検出にも業界で初めて成功した。  国際標準暗号「ミスティ」などを筆頭にセキュリティーの研究も強い。最近は、利便性と安全性を両立するクラウド時代の暗号開発でリードしてる。ここでもコンパクト化により、多様な機器への組み込みを狙う。量子暗号の研究の歴史も長い。宇宙の謎に迫る大型望遠鏡や各種衛星、宇宙ステーション向けなど、アンテナの研究開発では国内随一の専門部隊を持つ。

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