ノーベル自然科学3賞、基礎研究重視から見えてくる日本の課題

「出口戦略」偏重への警鐘か。引用論文数のシェア低下

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「若い人は知的好奇心を大切に」と呼びかける大隅栄誉教授
 東京工業大学の大隅良典栄誉教授の生理学医学賞受賞で幕を開けた2016年のノーベル賞。自然科学3賞での日本のノーベル賞受賞者は22人(外国籍を含む)となり、日本の基礎科学力の底力を改めて証明した格好だ。物理学賞と化学賞も基礎研究分野での受賞となったのも今年の特徴。これは実用化を視野に入れる「出口戦略」を重視しつつある現在の科学技術の風潮に警鐘を鳴らしていると受け止めることもできる。

 ノーベル賞を受賞する業績は、医薬品など社会に成果が還元された後に受賞するケースが多いと考えられがちだ。だが今回は、自然科学3賞すべてが基礎的な研究成果に対して贈られる。国内では基礎研究を含む科学技術力の低下が危ぶまれる。文部科学省によれば、日本の科学論文数はここ10年でほぼ横ばいだが、インパクトが高く、被引用回数が多い論文数の世界シェアは、年々下がっている。

 財政難の中、現在は国全体で事業化や実用化に結びつく応用研究を重視する潮流が強い。それに伴い、次世代の研究を担う若手研究者たちは、すぐに結果に結びつく流行の研究テーマを選びやすい。

 大隅栄誉教授は、「『役に立つ』とは、研究成果を起業化し、製品を生み出すことだけを指すわけではない。若い人には知的好奇心を大切にし、研究に取り組んでほしい」とエールを送る。

 研究成果の社会への還元が重要なのは当然だ。一方で、未来にイノベーションを起こすような技術が生まれるには、その種となる基礎研究が土台になる。応用と基礎のバランスをどのように取るべきなのか、ノーベル賞発表のこの時期だけでなく、国全体で継続的に議論する必要がある。

日刊工業新聞2016年10月7日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

2013年に質量の起源とされる「ヒッグス粒子」の存在を明らかにしたことが評価され、物理学賞を受賞したブリュッセル自由大学名誉教授のフランソワ・アングレール氏にインタビューさせてもらった。以前に比べ基礎物理学の研究は活発になっているか?の問いに  「日本の状況は分からないが、欧州はあまりポジティブではない。一番の理由は基礎研究をできる限り管理しようとしているからだ。産業界などが短期で実用化したいというのは理解できるが、基礎研究は最初の目的と異なる利用のされ方をすることが多い」と。 「基礎物理は、人間の理屈につながり、考え方になって、それが教育になる。文明として重要な柱だ。そして基礎物理は想像力が試される。想像力が飛んでいればいるほど、応用研究から自由を保たなければいけないし、長期的な企画でないといけない。結果的に社会の豊かさにつながると思っている」という言葉は心に響いた。

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