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がん治療にAIを!医療費抑制につながるか

研究組織が相次ぎ立ち上がる。がん研究会に気鋭の深層学習ベンチャーも
**「日本がゲノム医療をけん引できるように」
 がん研究会は5日、全遺伝情報(ゲノム)などを基に個々の患者に合った治療法を提案する「個別化医療」の高度化に向けた研究開発を進める新組織「がんプレシジョン医療研究センター(CPMセンター)」を1日付で設立したと発表した。ゲノム解析結果を活用したがん免疫療法や、血液などの体液を解析してがんの存在や特徴を診断する「リキッドバイオプシー診断法」などの研究を進める。

 がん組織や血液などの試料提供、臨床情報の取得、臨床試験の実施などについては、がん研有明病院(東京都江東区)と連携する。

 人工知能(AI)を使ったビッグデータ(大量データ)処理のノウハウを持つ企業との連携も検討。患者から得た各種情報と、最新の論文、学会発表などの情報を合わせて解析し、治療法の選択や再発予防に生かす。

 5日の記者会見で、CPMセンター所長を務めるがん研の野田哲生研究本部長がん研究所長は、「従来の個別化医療とはグレードの違う精緻な医療を提供したい」と語った。また、同センター特任顧問に就任した米シカゴ大学医学部の中村祐輔教授は、「日本が世界のがんゲノム医療をけん引できるよう、協力したい」と述べた。

PFNが最適治療薬の選択と術後予測


 一方、プリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)は5日、PFNがん研究所(PCRI)を設立したと発表した。最新のバイオテクノロジーとディープラーニング(深層学習)に代表される人工知能(AI)技術との融合領域の研究や産業化を進める。

 PCRIは東京大学産学連携プラザ(東京都文京区)内に設置する。ウエットラボの形式で次世代ゲノムシークエンサーを活用。医療機関とも密に連携しつつ、診断、治療、創薬の3分野で、新規がん診断法の確立やゲノム分析によるがん治療方針の決定、最適治療薬の選択と術後予測、個別の患者に適した創薬などを手がける。

 なお、独自の深層学習プラットフォーム「ディープ・インテリジェンス・イン・モーション」のベータ版を12月中旬から提供することも同日発表した。機械など端末側で深層学習を利用できる。
日刊工業新聞2016年10月6日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
2015年にオバマ米大統領が一般教書演説で発表した「プレシジョン・メディシン(精密医療)」。個人の遺伝情報を解析し、個人に特性に合わせて最適な治療法を提供するという“精密な”医療だ。画期的な医薬品・医療機器が開発される一方で、膨大なデータから最適な治療法を導き出す手法の確立は“一対”の関係にもあると言える。それは医療の効率化、医療費抑制にもつながる。「AI×ヘルスケア」は今後のキーワードになりそうだ。

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