開催中シーテック、まるっと早わかり。日本の電機復権は

「競争力の高いIoTソリューションを生み出せる」(日立社長)

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NECは耳穴の形状を音で識別する生体認証技術を披露
 IoT(モノのインターネット)技術が普及してきた。家電やデジタル機器といった身近なモノから、生産現場や社会インフラ、街づくりまで“つながる”ことで新たな価値を実現する製品やサービスの創出が活発化している。また機器を支える電子部品も進化している。4日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開幕したエレクトロニクス展示会「シーテック」はIoTがテーマ。出展各社は未来技術の提案を競っている。

 NECは耳で個人認証できるイヤホンを初披露した。個人により耳穴の形状が異なることに着目。反響音特性の違いで個人を特定する技術を確立した。特徴は「ユーザー側は何もしなくて良い」(NECの阿部竜太氏)点。暗証番号を打ち込んだり、個人認証用のIDカードをかざしたりする手間が必要ない。スマートフォンや入退室管理システムなどでの導入を想定する。

 パナソニックは3―5年後の住宅を想定した次世代のキッチン・食卓シーンを提案する。冷蔵庫やオーブン、IH調理機などの機器が情報をクラウド上で共有し、お酒や食材に合うレシピを提案。

 IH調理機はカメラで調理具合を見極めて火加減を調節し、複数の料理を同時に完成させる。そのほか、食材を載せた皿を置いて蓋(ふた)をするだけで加熱調理ができるマイクロ波調理機内蔵の食卓などの製品も披露した。

 IoTの展示会を目指す“新生”シーテック。土曜日開催を止めて、会期は火曜日から平日4日間となった。ビジネスユーザーの来場を促すためで、生産現場の改善につながる機器やサービスなど法人向けの展示も目立つ。

 三菱電機はIoTを使った「化粧品のボトルキャップ封止ライン」のデモを行っている。現場でリアルタイムに収集したデータを活用して、品質・稼働管理や予防保全を実現する。同社の野末直道氏は「現場から必要なデータだけをITシステムに集める。こうした“きれいなデータ”を使って効率的に分析できる」とアピールする。

(三菱電機の「化粧品のボトルキャップ封止ライン」のデモ)

 日本のIoT産業の発展度合いは、米国やドイツに比べ遅れているとの指摘が少なくない。だがシーテックの主催団体の一つ、電子情報技術産業協会(JEITA)の東原敏昭会長(日立製作所社長兼最高経営責任者〈CEO〉)は「遅れているとは思っていない」と否定した上で「むしろ日本は優位な立場にある」と指摘する。

 家電・デジタル機器や工場設備、社会インフラなど幅広い業界にわたって産業集積があり、モノづくりの技術を蓄積してきた。「これにITや人工知能(AI)を組み合わせていけば競争力の高いIoTソリューションを生み出せる」(東原会長)と説明する。

一方、日本企業の課題は自前主義に陥りがちなこと。IoTでは機器に加え、その上に実装するサービスを含め総合力が試される。日本企業は国内外のベンチャーや大学、研究機関とも“つながり”を広め、関係を深めていくことが不可欠だ。

ファシリテーター・八子知礼氏の見方


 最後の一段落に全てが集約されている。遅れていないとしても、自前主義にこだわりすぎると確実に遅れていくのはこの20年の電機業界の衰退を見れば陽の目を見るより明らか。

 デバイスからソフトウエア、そしてサービスまで。IoTはモノだけでは充足できなくなった本来求められる"機能"を複数のレイヤにまたがってトータルで価値提供する複合モデル。既存の組織構造、コスト算出方式、自社内開発からの脱却とスピーディな実装・改善サイクルが求められる。

日刊工業新聞2016年10月5日

COMMENT

歴史的にみると、日本のエレクトロニクス業界は、統一とか統合とかの動きが苦手だ。しかし、今やプレーヤーも経営陣も変わり、各会社の事業領域も変貌した。こうした状況下、IoTでどのようなリーダーシップが取れるか。日本には個別で良い技術が多く散在すると言われる。その一方で、グーグルやマイクロソフトのように、強引に統合を進める企業はいない。IoT実現に必要な統合を誰がリーダーシップを取って、どのように進めるのか、今後の動きに注目している。

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