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もっとリアルなVR体験を!素早い動きでも違和感ない触覚体感スーツ

電通大、接触と振動の遅延20ミリ秒内
もっとリアルなVR体験を!素早い動きでも違和感ない触覚体感スーツ

触覚スーツ「ハルクス」の両腕版

 電気通信大学大学院情報理工学研究科の梶本裕之准教授と植松遥也大学院生らは、信号入力から振動を提示するまでの遅延が20ミリ秒以下と短い、触覚提示スーツ「HALUX(ハルクス)」を開発した。光を当てるだけで振動するため、腕を振ってVR(仮想現実)のボールを打つなどの素早い動きでも、接触と振動のずれがない。2017年度の実用化を目指す。

 光センサーと振動子を組み合わせた小型モジュールを伸縮スーツに縫い付けた。片腕を45個の振動モジュールで覆い、すべての方向からの振動を提示できる。パソコンやネットワークを経由しないため、遅延が少ない。

 一般的にボールを投げる際、手の先は秒速20メートル以上で動く。0・1秒触覚の提示位置と振動がずれると、VR体験時の映像から、2メートル程度ずれることになり、違和感が生じる。ハルクスはこの誤差をセンチメートルレベルに抑えることに成功した。

 触覚の提示空間を光の照射範囲として厳密に設定できる。研究室では光源にプロジェクターを利用した。しま模様の光を上下に動かすと、上から下へ触られたように感じる。

 全身に触覚提示するには、たくさんの振動子を体に張り付ける必要があった。これらを同期して制御する必要があり、たくさんの人が全身触覚スーツを体験する場合、混線などの課題があった。光なら簡単に制御できる。

 またVR体験時にはヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を装着して周囲は見えなくなるため、指向性で強い光を当てられる。
日刊工業新聞2016年10月4日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
VRも視覚だけでなく、新たな体験がどんどんできるようになっています。ハードとともに、魅力的なソフトが出てくることが期待されます。

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