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染色最大手のセーレン、「革を超える新素材」で攻め込む中国自動車市場

蘇州のシート基布生産に続き、河北の縫製一貫生産工場は事業拡大につながるか!?
染色最大手のセーレン、「革を超える新素材」で攻め込む中国自動車市場

機能性を高めた合成皮革素材「クオーレ」

 セーレンは自動車用シート材で原糸から縫製品までの一貫生産体制を構築するため、中国・河北省に新会社「世聯汽車内飾(河北)」を8月めどに設立する。工場の面積は5000平方メートル。既存の建屋を活用し、生産開始は9月を予定する。ミシンなどの設備投資として約2億円を投じる。売上高は2016年に10億円、20年に50億円を計画。同社は世界10カ国、18拠点で自動車用内装材の企画、製造、販売を手がけている。
(日刊工業新聞2015年05月14日 素材・ヘルスケア・環境面)

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 セーレンは中国で自動車シート向け合成皮革の生産量を2016年度に13年度比2・4倍の月38万メートルに引き上げる。現地に進出する日系自動車メーカーの増産や受注が拡大する北米向け輸出に対応する。繊維素材と比べ機能性に優れ付加価値の高い合成皮革素材の拡販を国内外で積極化し、合成皮革の売上高を16年度に同17・3%増の115億円に引き上げる。

 セーレンは本革素材と同等の肌触りや耐久性を実現した合成皮革「クオーレ」や表面温度を制御できる「クオーレモジュレ」などを日本と中国で生産する。クオーレは本革より車1台当たり約2キログラム軽く、価格も半減できるなど燃費改善やコスト削減に貢献する。

 中国では蘇州市にある工場で自動車シート生地の繊維や合成皮革素材などを生産する。自動車シート向け素材の生産量は16年度までに13年度比55・3%増の月132万メートルに引き上げる。そのうち合成皮革が占める割合は13年度と比べ約10ポイント増の28・8%に拡大する。

 蘇州工場での合成皮革の生産能力は月40万メートル。現在は日系メーカーに供給する中国国内向け以外に、日本や北米への輸出にも対応する。北米では米国メーカーからの受注が拡大するなど需要が旺盛。このため、メキシコなど日中以外の地域で17年度以降の新工場建設も検討する。

 セーレンはシート素材を日本、米国、タイ、中国、ブラジル、インド、インドネシアで生産。13年にインドとインドネシアで量産をはじめ、16年度に2拠点合計の生産量を月41万メートルに拡大する。海外売上高の大半を占める車両資材の増産などにより、16年度の海外売上高比率を13年度比7・5ポイント増の41・8%に引き上げる。
日刊工業新聞2014年06月17日 自動車面
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
1980年代にカーシート事業に参入した染色最大手のセーレン。同社は当初から自らニット機を導入して、それまで誰も試みなかった編み立てー染色に至る一貫生産に取り組むるなど、カーシート基布業界での地位を確立した。また、エアバッグ縫製においても国内大手であると同時に、自動車関連事業のグローバルオペレーションを加速している。その中で、海外で根強いニーズがある「革」に対応する素材として、「革を超える新素材」のコンセプトで「クオーレ」シリーズを提案、自工メーカーからの採用が広がっている。注目されるのは、蘇州でのカーシート基布生産工場に続いて、今回の石家荘市における縫製工場建設による一貫生産体制が、セーレンの自動車関連の事業拡大のテコになるのかだ。

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