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ネオジム磁石 コスト6割減を実現する製造プロセスとは

NDFEBが開発、バインダーなどを追加せず素材成形後に形や密度を保つ
 NDFEB(京都市西京区、佐川眞人社長)は、ネオジム磁石の製造コストを現在より約6割減らせる技術を開発した。磁石素材の成形強度を保つ条件を見いだして、焼結に必要な型をなくし、歩留まりも向上した。レアアース(希土類)のジスプロシウムの添加量も半減できる。実用化すれば、ネオジム磁石の低価格化につながる。

 ネオジム磁石は直径1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の粉末材料を炭素製の型に詰めて焼結する。材料の形が崩れやすいため、成形時だけでなく約15時間かかる焼結時にも型が必要となる。このため磁石メーカーは型を大量に用意しておかねばならなかった。

 同社は磁石の性能を下げるバインダーなどを追加せず、素材成形後に形や密度を保つ製造条件を見いだした。この条件で製造すれば、型に粉末材料を詰めた後に型を外しても粉末の密度や形を保ち、焼結時の型が不要になる。成形は1分程度で済むため、メーカーは保有する型を大幅に減らせる。

 さらに任意の形に成形もしやすくなる。現在は磁石をブロックとして製造し、その後製品の形に加工していた。開発した技術を使えば、最終製品の形で成形できるようになる。後加工が必要なくなるため、材料の無駄が減らせる。

 成形時の粉末充填の均一性も向上する。磁石全体が緻密な組織を持つようになり、ジスプロシウムの添加量を減らしても磁力を向上できる。

 佐川社長はネオジム磁石の発明者で日本国際賞の受賞者。富士通や住友特殊金属(現日立金属)などを経て、NDFEBを創業した。

 NDFEBは自社の業務を研究開発に特化し、開発した技術を材料メーカーに移転している。今回の技術の前身となる技術は大同特殊鋼が事業化し、権利などを譲渡した。佐川社長は新しくNDFEBを設立して、新技術の権利などを集中管理している。
日刊工業新聞2016年9月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 30年以上前に発明されたネオジム磁石がいまだに最強の座にいるのは製造プロセスの進化のおかげです。30年間、ネオジム磁石を超える新材料はみつかっていませんが、ネオジム磁石は30年間進化し続けています。  100年前に本多光太郎先生(東北帝国大)がKS磁石鋼を発明してから、磁石はずっと日本の研究者が先頭を走ってきました。フェライトやサマコバなど、1世紀、日本が世界を引っ張っている材料です。LEDがノーベル賞に選ばれ、ネオジム磁石がとらないわけがないというのが磁石研究者の思いです。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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