忘れた相手思い出す脳の仕組み解明―理研、自閉症治療に活用期待

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マウスの行動テストの概要図。真ん中のマウスがテスト対象のマウス。同マウスと飼育箱で一定期間ともに過ごした「よく知るマウス」と、未知のマウスをそれぞれおりの中に入れ、各マウスに接触する際の脳活動を観察した(理研提供)
 理化学研究所脳科学総合研究センターの奥山輝大研究員と利根川進センター長らは、記憶や空間学習能力に関わる脳の器官「海馬」が他の個体についての記憶「社会性記憶」を貯蔵する仕組みをマウスで解明した。よく知る相手を思い出している時に、海馬内の「腹側CA1領域」と呼ばれる部分の細胞集団の活性化を確認。この細胞集団を光で人工的に活性化させると、忘れた相手を思い出すことに成功した。

 自閉症患者は、この社会性記憶が低下していると分かっている。このため、研究が進めば治療法の開発に貢献できる可能性がある。

 マウスはよく知る相手より、知らない相手に近づく性質がある。この性質を応用し、マウスの行動テストを行った。テスト対象のマウスが、よく知る別のマウスに接触する際の脳の活動を観察した結果、腹側CA1領域の神経細胞が活性化していることが分かった。

 マウスはよく知る相手でも、24時間程度離れると、相手のことを忘れてしまったかのような行動をとる。こうしたマウスに青色光で人工的に神経細胞を活性化できるたんぱく質を発現させ、青色光を照射したところ、長時間離れても相手を思い出させることができた。

 さらに、光で腹側CA1領域の神経細胞を活性化しながら、電気で恐怖刺激を与えると、恐怖刺激と相手の記憶が合わさり、相手のマウスを避けるようになった。同様に同領域の神経細胞を活性化しながら薬物による報酬刺激を与えると、相手のマウスに接近行動をとるようになり、記憶を操作できた。

日刊工業新聞2016年9月30日

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

人の顔と名前を覚えたり思い出したりするのが苦手なのですが、この脳の働きが鈍いのかもしれません。

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