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東京・西多摩は高齢者に優しい“世界一”の地域!?

高齢者用の施設充実
 当院は、東京都西多摩郡日の出町に立地しています。西多摩(青梅市、あきる野市、福生市、羽村市および西多摩郡)地域の入り口は、新宿から電車で1時間ほどの福生市です。深部までは、そこからさらに車で1時間以上かかり、最深部までは、標高2017メートルの雲取山なので、車では行けません。西多摩地域は東京都の面積の25%を占めていますが、人口は3%程度にとどまっており、過疎の山間部と人口集中地区が混在する地域です。

 この西多摩地域で世界に誇れることがあります。それは特別養護老人ホームで受け入れ可能な人数が6512人であることです。人口10万人に対して1628人の受け入れが可能となっていて、全国平均が311人ですので、割合としては、非常に高い率と言えます。

 ではなぜ、西多摩地域なのでしょうか。東京の都心部は地価が非常に高く、そのために高齢者用の施設を開設しても採算がとれません。

 しかし、高齢化が進むことは確実視されており、そのための施設を確保するため、比較的地価が安い西多摩地域に建設されてきた歴史があります。このことによって、西多摩地域は人口割合にしては、多くの高齢者用施設を有することになりました。

 高齢化率26%と世界一の超高齢社会となっている日本では、高齢者向けの施設が世界で一番必要とされています。西多摩地域は、人口10万人に対する受け入れ可能人数は、日本一です。ということは、世界一と言っても過言ではないと思います。
 
 西多摩地域には、病院の中でも長期間にわたって医療を必要とする方を対象にして、医療と療養環境を同時に提供する療養型病床群が、特別養護老人ホームと同様の理由で非常に多く設置されています。

 一方、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を発症したときに必要となる急性期病院の病床数は全国平均の半分ほどしかありません。

 しかし、西多摩地域内での救急車の受け入れ率は80%と高く、75歳以上の方に対する地域内での医療提供率は、高度急性期から慢性期までいずれも80%程度と、都内で最も高くなっています。これは、慢性期医療や在宅医療が充実しているためと自負しています。

 東京は、これからの超高齢社会に備えて世界一の高齢者医療地域を西多摩に作り上げてきました。皆さんが知らない“世界一”をこの紙面をお借りして紹介させていただきました。
(文=医療法人財団利定会 大久野病院理事長 進藤晃)
日刊工業新聞2016年9月30日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
西多摩地区であれば東京都心部に住んでいる家族もお見舞いや面会に行きやすく、適度に自然も残っているのでのびのび過ごせそうです。

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