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「出前2.0」時代へ? ウーバー、今日から人気レストラン料理を無料配達

まず都内から、人気イタリアン「ダルマット」「焼肉トラジ」など150店以上
 ウーバージャパン(東京都渋谷区、高橋正巳社長)は、飲食店と利用者、配達員をネットワークでつなげ、多様な食事を届けるサービス「ウーバー イーツ」を始める。29日に東京都渋谷区や同港区で始め、地域を順次拡大する。人気イタリアン「ダルマット」や精進料理「宗醐」、「焼肉トラジ」など150以上のレストランが利用できる。

 スマートフォン用アプリケーションから料理を選ぶと、近くの配達員が自転車や小型バイクに乗って、飲食店で受け取った料理を利用者に届ける。利用者は店舗利用時と同じ価格で手軽に料理を楽しめる。

 飲食店は初期投資なしで配達サービスを始められる。配達員は登録制で、時間が空いた時だけ働け、「3者にメリットがある」(高橋社長)。ウーバーは配車サービスで業界に一石を投じた。最近はトヨタ自動車との提携で注目されている。

日刊工業新聞2016年9月29日



「『LINE』など他のサービス歓迎」


 スマートフォン一つあれば目的地に行ける配車サービス「ウーバー」が世界中で話題だ。同サービスを手がける米ウーバー・テクノロジーズは高い将来性を買われ、トヨタ自動車やサウジアラビア政府系ファンドの出資を受けた。他の世界的な企業もウーバーへ関心を寄せる。では、日本での事業はどう展開しているか。ウーバージャパンの髙橋正巳社長に国内の現状と方向性について聞いた。


 ―トヨタが出資するなどウーバーに周囲が注目しています。
 「ユーザーの使い勝手が良く、かつ都市問題解決の貢献につながるところが魅力なのだろうと受け止めている。2009年にウーバーが創業し、いまサービス実施国は70を超え400都市で配車サービスが利用できる。同じアプリでどこでも使え、クレジット決済なので利用するとすぐ降りられる。運転車、乗客双方が評価し合うのでサービス向上につながる。こうしたサービス品質の高さが魅力だ。さらに海外では、相乗りや混雑する場所の利用料金が一時的にアップする、といった都市の渋滞解消につながる工夫もしている。自動運転車の普及など将来的な車社会の変化とも相性が良さそうなところも高い評価の一因だろう」

 ―日本事業の現状を教えてください。
 「14年3月から東京で本格的にハイヤーの配車サービスを始めた。稼働台数など詳細は話せないが、15年に東京でウーバーを利用した海外ユーザーの出身国は99カ国になる。それでも日本に住む人の利用が7割だ。16年5月にはNPOと連携し、京都府京丹後市の丹後町地区でもサービスを始めた。こちらは東京と違い、自動車が運転できない高齢者と地域を観光する人の“足”となるもの。地域住民が登録してドライバーとなる。地方交通は利用者が少なくインフラの維持に苦労している。ウーバーの仕組みで課題解決できれば、と取り組んでいる」

 ―今後の日本での展開は。
 「利用できる都市を増やしつつ、東京でも利用できる車の数を増やしたい。いま東京では、車を呼んでから来るまで6分かかる。シンガポールは平均2分。東京でもこのレベルを目指す。京丹後のモデルも他へ展開する。配車サービス以外でも、海外では食べ物を運んでくれる『ウーバーイーツ』やメッセージを運ぶ『ウーバーラッシュ』などのサービスを提供している。もちろん日本でも検討する」

 ―日本での事業進捗(しんちょく)に満足していますか。
 「毎日いろいろな自治体や企業から連携の話があり、進捗に不満は持っていない。日本は規制が厳しいと言われるが、国ごとの事情は考慮してビジネス展開している。『LINE』など他の配車サービスが登場することも歓迎。みなで業界を盛り上げていきたい」

【記者の目・知ってもらうことが近道】
 実際にウーバーのサービスを使ってみるとその便利さが分かる。便利さを知る海外からの観光客が多く利用するのも当然だ。日本でも一度利用してもらうとリピーターが増えると思うが、使ってもらうにはウーバーをよく知ってもらうのが近道。事業規模や稼働台数などの情報もオープンにすることも重要だろう。
(聞き手=石橋弘彰)

2016年6月29日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自分が子どものころ、「出前」をたのむことがあった。チェーン店の宅配が一般化する一方で「出前文化」は減ってきているはず。「出前2.0」としてウーバーらしい新しい価値が生み出せるか。

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