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EPSの実証時間が10分の1に?日立、車の制御システムの安全性を自動検証

設計者ごとに異なる安全要件の記述を簡略、パターン化。自動運転にも効果
 日立製作所は自動車制御システムの安全性を自動検証する手法を開発した。設計者ごとに異なる安全要件の記述を簡略化してパターン化し、記述が正しいかの確認と、類似システムなどの検証を効率化する。電動パワーステアリング(EPS)の場合、検証時間は従来比約10分の1ですむ。2017年までに日立オートモティブシステムズが導入、外販も検討する。自動運転車では制御システムが膨大になり、作業効率向上が求められている。

 日立製作所と日立オートモティブシステムズが共同開発した。自動車制御システムは不具合が発生した場合に危険を回避する機能安全を持たせることが国際標準規格「ISO26262」で定められている。このため安全要件の検証はシステム開発には不可欠だ。

 自動検証ツールは、安全要件の概略を示した「上位要件」と上位要件を満たすために必要なハードやソフトウエアの構成・処理の詳細を示した複数の「下位要件」を、従来のような文章ではなく、あらかじめ定義した簡略化した表現で表記。コンピューター上で、上位要件と下位要件を自動照合し、上位を実現するための下位要件に不足がないかを自動で判定する。

 類似した部品構成を持つ製品であれば一度作成した安全要件の論理式の一部を再利用することが可能。また製品改良時にも使えるため、システム作製効率が大幅に向上する。

 これまで安全要件は日本語や英語で作製し、専門知識を持つ担当者が内容漏れを目視で確認していた。表現が不統一であったほか、あいまいな場合があり、内容確認に時間がかかっていた。

 日立オートモティブシステムズは新型EPSに活用し、検証時間を従来の約60分から約6分に短縮した。英語での記述に比べて記述量も3割削減した。

 自動運転車の開発競争が活発化する中、日立はまず同検証技術をグループ内で採用し、自動運転分野での競争力を高める。

日刊工業新聞2016年9月26日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日立製作所は自動運転に必要な情報通信技術やステレオカメラなどの構成部品まで総合提案できる。グループ企業の日立オートモティブシステムズやクラリオンとの連携を強め次世代技術の開発を加速している。今回の取り組みもその一環となる。 (日刊工業新聞第一産業部・下氏香菜子)

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