IoTデータの保護で考えるべき3つの視点
経産省で検討始まる。法制度とのバランス、クローズドでは鮮度が落ちる、流通させてこそ
経済産業省は26日、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などを活用したデータ利活用拡大を見据えて「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会(仮称)」を設置することを決めた。10月に第1回を開催。12月に論点を整理し、来年3月末に中間で取りまとめる。特許庁、経済産業政策局、産業技術環境局で横断的に議論する。
同日開いた産業構造審議会(産構審、経産相の諮問機関)知的財産分科会(会長=五神真東京大学総長)で決めた。検討会は、毎月2回程度のペースで進める。「自動車」「ロボット」「健康・医療・介護」の3分野を議論の対象に設定。企業の経営と知的財産戦略の方向性、必要となる技術についての強みや弱みを議論し、望ましい知財制度を検討する。
また、知財全般の議論にとどまることなく、個別の産業分野の将来像や課題を視野に入れて検討する。そのため検討結果は、政策方針「新産業構造構造ビジョン」を扱う産構審新産業構造部会に反映させる。
検討会では、データに関し、保護制度の検討や企業間の契約実態を把握。さらに、標準規格にのっとった製品を発売するのに欠かせない特許である「標準必須特許」をめぐる問題の解決、特許権を行使して巨額のライセンス料などを要求する「パテント・トロール」への対応、国境をまたいだ侵害行為に対する権利保護、知的財産の協調利用も議論する。
標準化制度や国立研究開発法人を活用した業種横断プロジェクトの編成などにも踏み込む方針だ。
IoTデータについて保護する方向で検討が始まるとのことだ。某メディアでも “IoTデータは「営業秘密」 保護強化へ"という本記事と関連づいている記事が掲載されていた。なんでもオープンにせよということではないことを前提に、以下の視点でも是非議論をしていただきたいものだ。
1つ目は、個人情報保護法との対比と反省だ。過剰な保護ないしはそれに過剰に反応する人達により、日本経済はマーケティング面で個人へのプロモーションなどにおいて大きく遅れを取ってきた。その反省と次の法制度に対するバランス感覚が活かせているか。
2つ目は、IoT時代には1つの企業ではビジネスモデルを作りにくくなっていることに対して、自社は無課金であるが協業先企業によるデータ収集分析結果を販売するモデルは考えられる。およそ自社だけのクローズドなデータ蓄積ではデータの鮮度が下がり必要なデータが不足し、競争力に資する多面的な分析に支障が出よう。その点が配慮されているか。
3つ目は、タンス預金を思い起こして欲しい。使われない個人資産が数百兆あるのを市場流通させるのにどれほど苦労していることか。そのお金は全く価値を生んでいないまま塩漬けにされているのだ。振り返ってデータが企業内で留まってしまった際にもそれらは価値を生まないばかりかストレージ容量を浪費して凄まじい勢いで鮮度が落ちる。データは貨幣と同じ、流通させてこそ価値が上がるのだ。
<続きはコメント欄で>
同日開いた産業構造審議会(産構審、経産相の諮問機関)知的財産分科会(会長=五神真東京大学総長)で決めた。検討会は、毎月2回程度のペースで進める。「自動車」「ロボット」「健康・医療・介護」の3分野を議論の対象に設定。企業の経営と知的財産戦略の方向性、必要となる技術についての強みや弱みを議論し、望ましい知財制度を検討する。
また、知財全般の議論にとどまることなく、個別の産業分野の将来像や課題を視野に入れて検討する。そのため検討結果は、政策方針「新産業構造構造ビジョン」を扱う産構審新産業構造部会に反映させる。
検討会では、データに関し、保護制度の検討や企業間の契約実態を把握。さらに、標準規格にのっとった製品を発売するのに欠かせない特許である「標準必須特許」をめぐる問題の解決、特許権を行使して巨額のライセンス料などを要求する「パテント・トロール」への対応、国境をまたいだ侵害行為に対する権利保護、知的財産の協調利用も議論する。
標準化制度や国立研究開発法人を活用した業種横断プロジェクトの編成などにも踏み込む方針だ。
ファシリテーター・八子知礼氏の見方
IoTデータについて保護する方向で検討が始まるとのことだ。某メディアでも “IoTデータは「営業秘密」 保護強化へ"という本記事と関連づいている記事が掲載されていた。なんでもオープンにせよということではないことを前提に、以下の視点でも是非議論をしていただきたいものだ。
1つ目は、個人情報保護法との対比と反省だ。過剰な保護ないしはそれに過剰に反応する人達により、日本経済はマーケティング面で個人へのプロモーションなどにおいて大きく遅れを取ってきた。その反省と次の法制度に対するバランス感覚が活かせているか。
2つ目は、IoT時代には1つの企業ではビジネスモデルを作りにくくなっていることに対して、自社は無課金であるが協業先企業によるデータ収集分析結果を販売するモデルは考えられる。およそ自社だけのクローズドなデータ蓄積ではデータの鮮度が下がり必要なデータが不足し、競争力に資する多面的な分析に支障が出よう。その点が配慮されているか。
3つ目は、タンス預金を思い起こして欲しい。使われない個人資産が数百兆あるのを市場流通させるのにどれほど苦労していることか。そのお金は全く価値を生んでいないまま塩漬けにされているのだ。振り返ってデータが企業内で留まってしまった際にもそれらは価値を生まないばかりかストレージ容量を浪費して凄まじい勢いで鮮度が落ちる。データは貨幣と同じ、流通させてこそ価値が上がるのだ。
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日刊工業新聞2016年9月27日