ニュースイッチ

コマツ社長に聞く米ジョイ買収の勝算

「鉱山機械は活況が短く、専業として生き残ってきた経験は豊富」(大橋社長)
コマツ社長に聞く米ジョイ買収の勝算

大橋社長とコマツの鉱山機械

 鉱山機械メーカーの米ジョイ・グローバル(ウィスコンシン州)を約3000億円で買収するコマツ。鉱山機械市場の回復を見据えた決断で、2017年半ばをめどに子会社化する。これにより鉱山機械事業の売上高は単純合算で米キャタピラーと同規模の7800億円に拡大する。ジョイとの相乗効果をどのように打ち出すのか。コマツの大橋徹二社長に戦略を聞いた。

 ―コマツにとって過去最大の買収額でジョイを傘下に収めます。
 「鉱山機械は活況な期間が短い。市場動向を10年単位でみた場合、以前は良い時期が1―2年ぐらいしか続かなかったが、ジョイは専業メーカーとして生き残ってきた。経験豊富だ」

 ―コマツとジョイは鉱山機械の事業方針が似ています。
 「新車が売れなくても、アフターサービスを拡大することが求められる。我々は代理店に資本参加したり、新たに設けたりして、直接的な販売やサービスが大事な要素ととらえており、ジョイとはこの考え方が同じだ。また、鉱山機械の品ぞろえで補完性も高い」

 ―ただジョイの前期の業績は純損益が赤字でした。
 「引当金など構造改革費用を積んだ上での赤字で、買収とは関係なくジョイが改革を進めている。買収のタイミングは良かったと考えている」

 ―鉱山機械の需要を喚起することが求められます。
 「世界で人口が増加して都市化が進めば、鉱物資源の生産量は増える。ただ、今後は掘りづらい場所から資源を採掘することが増えてくるだろう。例えば標高が高い場所では、無人化や遠隔操作の技術が求められる。ジョイも坑内掘りの鉱山機械で無人化を訴求しているようだ」

 ―18年度までの中期経営計画における買収効果は。
 「需要がなかなか回復しない中で、中計の達成に取り組んでおり、ジョイの買収もこうした活動の一つだ。ジョイの株主総会や各国当局の認可が控えていて、(買収完了までは)まだ時間がかかる。このため、中計で示したこのほかの活動を進めることも大事だ」

 ―一方で建設機械市場の見通しは。
 「中国は4―6月の需要は前年同期に比べて落ちているが、我々が販売した建機の稼働時間は2月以降プラスが続いている。(販売が増える)春節明けの来年2―3月の動向を見極めたい」

【記者の目・部品調達などで買収効果】
 コマツは4月から始まった3カ年の中計で、既存事業の強化に向けた戦略としてM&A(合併・買収)の活用を盛り込んだ。ジョイの買収により、鉱山機械市場の回復をにらんで先手を打つ。採掘現場での情報通信技術(ICT)の活用や、部品の調達などで、ジョイの買収効果をどう打ち出すかが焦点になりそうだ。
(文孝志勇輔)
日刊工業新聞2016年9月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、大橋社長とゆっくり話す機会があった。コマツが米国に進出した当初、顧客からよく「ジョイのようなサービスレベルになってくれ」と言われたそうだ。それだけジョイには有形・無形の資産がある。同時に大橋社長は「社長は10年先を見据えて投資している」と。そこから買収への自信を感じ取った。

編集部のおすすめ