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糖尿病治療を心理面から支援。医師が患者に共感を示すこと

専門医は語る「医学教育の中に会話の値打ちが入っていないのが問題」
糖尿病治療を心理面から支援。医師が患者に共感を示すこと

患者を勇気づける視点が求められる(ノボノルディスクの疾患啓発イベント)

 やるべき事は分かっているのに、実行できない―。糖尿病治療では常にこの問題が横たわる。患者にとって食事制限と運動の継続は苦労を伴うためだ。医療従事者や製薬会社は患者との対話を深め、治療への意欲を引き出すことが求められる。

 【守れない事例多く】
 「アイスクリームをやめますと言っていた患者が、診療の会計待ちの時間に食べていた」。奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は自身の経験をこう振り返る。

 糖尿病を放置すると神経障害や失明といった合併症に至るため、食事・運動療法で血糖値を抑える必要がある。だが患者は診察室で同意しても実際にはやらない事例が多い。薬物療法でも経口剤の服用回数を完全に守れている人は4人に1人にとどまる(日本イーライリリー調べ)。患者負担が大きいとは言え、努力が求められるところだ。

 ただ石井教授は論理的な指示だけをしがちな医師側の問題も指摘する。例えば不安や気分の落ち込みについて聞かれた経験がある日本の患者の割合は15・9%で、世界平均の半分ほどだという。「心の状態が軽視されている」(石井教授)現状から脱し、患者に共感を示して治療意欲を高めることが必要と言える。

 【選手が体験談】
 この観点で製薬会社も疾患啓発に注力している。デンマークのノボノルディスクは1型糖尿病患者で構成するプロサイクリングチームと契約。選手がレースやイベントの場で糖尿病克服の体験談を語るなどし、血糖値を調節できれば好きな事に取り組めると訴える。病と闘うのは患者本人。糖尿病ではなおさらだ。医療関係者が心理的な面から闘いをどれだけ後押しできるかが問われている。

 【専門医は語る/奈良県立医科大学糖尿病学講座教授・石井均氏】
 患者さんは先生をどうごまかそうか、医者はどうやって言いつけを守らせようかと、互いに人を操作することを考えている。患者の主観をもとに治療を組み立てるべきだ。(糖尿病治療のために仕事や用事をさまたげられないといった)QOL(生活の質)と治療実行度には相関がある。主観的なQOLが高くなるような治療が求められる。

 対話不足の背景に(患者1人当たりの診療時間が少ないなどの)構造問題があるのは間違いない。だが全体としてはコミュニケーションの価値が認識されていない。学生への講義でも「先生、昨日何を食べたかなどと患者に聞いて何になるんですか」と言われる。科学的な論理で治療が成り立つという思い込みがあり、医学教育の中に会話の値打ちが入っていないのが問題だ。(談)

※「病と闘う/疾患治療最前線」は日刊工業新聞で随時連載中
日刊工業新聞2014年12月02日 ヘルスケア面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ちょうど昨日、うちの会社でも健康診断があった。もともと血糖値が高い自分は、ひとまず夜にアイスクリームを食べることを控えることにした。

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