三菱ふそう、電気トラックを来秋から投入。日本を開発拠点に

小型車「eキャンター」公開。電池切れへの不安を解消できるか

 【独ハノーバー=西沢亮】三菱ふそうトラック・バスは21日、2017年後半から日米欧で電気だけで走る小型トラックを販売すると発表した。航続距離は最大となる3トンの荷物を積んだ場合で100キロメートルを実現。市街地での短距離輸送の利用を見込む一部の顧客に納入し、数年後をめどとする量産車の開発につなげる。航続距離に限りがあるなか、電池切れへの不安を解消する運用面でのきめ細かなサービスが、普及のカギとなりそうだ。

 21日に独ハノーバーで報道陣に公開された国際商用車ショーで、積載量2―3トンの小型電気トラック「eキャンター」を世界初公開した。

 容量13・8キロワット時のリチウムイオン電池を採用。輸送距離や用途に応じて搭載する電池の数を選択できる。最大5個の電池を載せた場合、車両総重量7・5トンの車両で約100キロメートル走行できる。親会社の独ダイムラー・グループが乗用車向けに内製する電池と共通化し、量産効果も取り込む。出力は185キロワットで、最短1時間弱で80%まで充電できるという。

燃費改善でディーゼルに対抗


 初期費用はディーゼルエンジンを搭載した同社従来車と比べ割高だが、燃費の改善などで2年で回収できると試算する。ポルトガルと日本で生産する。

 小型電気トラックは日野自動車や日産自動車が試作車を開発して実証運行に取り組むが、販売には至っていない。一方、次世代車として期待される小型ハイブリッドトラックは日野が03年に投入したのを皮切りにいすゞ自動車や三菱ふそうが販売する。

 ただ環境意識の高い顧客への販売に偏るほか、「ディーゼルエンジンの改良が進み、燃費面でのハイブリッドのメリットが薄れつつある」(商用車メーカー関係者)との指摘もあり、ここ数年は伸び悩む。

 「ハードウエアをはるかに超えてその先を考えている」。ダイムラーの商用車部門を統括するヴォルフガング・ベルンハルト取締役は20日、インターネットとつないで効率的に電気トラックを運行する将来的なシステムを発表。

日本は1日の配送距離が50km


 商用車ショーで公開した大型電気トラックの試作車に搭載するシステムで、予定のルートや積載量などを入力して目的地までに必要な充電量を計算。計画ルートと現状の運転状況や電池残量を車載画面に表示し、交通事情などから電気の消費が計画より増えて目的地への到達が難しくなると判断すれば、電気消費量が少ない運転モードに切り替えるなどの対策を講じる。

 販売するeキャンターではこうしたサービスの導入予定はないが、量産車での採用を計画する。三菱ふそうによると日本の市街地を走る小型トラックの約8割は1日の配送距離が50キロメートル程度で、eキャンターの潜在需要は高いとみる。

 またダイムラーはeキャンター以外の電気商用車として18年に商用バンと路線バス、20年代初めに大型トラックの市場投入を予定する。ソフト面のサービスを充実して航続距離への不安を取り除くことができれば、世界で電気商用車の普及を後押しすることになりそうだ。

HVからEVへ。中型・大型の開発視野に


 三菱ふそうトラック・バスはハイブリッドシステム(HV)の開発拠点「グローバルハイブリッドセンター」(川崎市中原区)で電動商用車の開発を拡大する。親会社の独ダイムラーの商用車部門でグループのHVシステム開発統括拠点として発足し、現在は小型電気トラックの開発も手がける。同社のマーク・リストセーヤ社長は中型や大型で電気トラック(EVトラック)の開発の必要性が高まれば、「同センターが担うことになる」との見通しを示した。

 リストセーヤ社長が21日、独ハノーバーで開幕した国際商用車ショーで記者団の取材に応じ、明らかにした。グローバルハイブリッドセンターは2017年末から日米欧で納入する小型電気トラック「eキャンター」を開発。数年後をめどとする量産車の開発も担う。リストセーヤ社長は電動化が主流になっていくとし、「グローバルハイブリッドセンターを電動化技術の開発拠点に変えていきたい」との考えを示した。

日刊工業新聞2016年9月22日/23日

明 豊

明 豊
09月23日
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 開発担当のアイドガン・チャクマズ副社長は「ハイブリッドは必要な技術で開発を続けることは意味がある」と話しているが、使用距離や価格などで顧客の要求に十分応えきれていない面があるという。
 ダイムラーの開発部門はとても深いところまで考えている印象がある。今回のEVシフトは記事中にある単なるクルマのハードウェアの問題だけでなく、交通インフラや社会システムまでの未来像から描いているのではないか。

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