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2020ロボット五輪、サービスロボット種目は「家庭」「コンビニ」「公共」

プラットフォーム候補にトヨタ「HSR」
2020ロボット五輪、サービスロボット種目は「家庭」「コンビニ」「公共」

競技のプラットフォーム機の選定にも注目が集まる(トヨタの生活支援ロボ「HSR」)

 国際ロボット競技大会のサービス分野の3種目は人工知能(AI)と機体のプラットフォーム戦略が問われる戦いになりそうだ。競技の舞台は「家庭」と「コンビニ」、「公共」の三つで、生活支援や接客、道案内などを競う。音声対話などのコミュニケーション技術はAIの得意分野だ。ソフトウエア次第で機能を増やせるため、ロボットのプラットフォーム機をどの企業が提供するかがカギになる。その筆頭候補にトヨタ自動車の「HSR」が挙がっている。

 サービスロボは移動や作業、コミュニケーションなど幅広い研究者が参画する分野だ。研究人口が多く、最も国際色豊かな種目になりそうだ。競技コンセプトは人とロボットの協働・協調。玉川大学の岡田浩之教授は「ロボットだけでは満点は取れない。人との適切な協調が高得点につながる」と説明する。

 もともと生活支援ロボにはキラーアプリがないという課題があった。人間が日々こなしている仕事は、雑多で高度な知的作業の集合だ。洗濯機や電子レンジのように洗濯や加熱などの単機能だけでは仕事にならない。ここに人間の世話が加わると対話や知的処理などが必要になり、技術難度が跳ね上がる。

 そこで「家庭」はプラットフォームとなる機体を一つに絞り込む構想だ。参加チームが共通の機体をベースにアプリを開発する。各チームがプログラムを共有できるため、良いとこ取りして開発を加速する効果がある。

 この候補にトヨタの「HSR」が挙がっている。生活支援ロボのプラットフォームに育てる狙いだ。HSRはロボカップにも採用され、技術者向け機体の試験量産が始まっている。そもそも家庭内で作業可能な量産機がHSRしかない状況にある。

 次に注目されるのは詳細な競技環境だ。床に脱ぎ散らかされた服や机の上で積み上がった本や雑誌など、実際の家の状況をどこまで追求するかで難度が大きく変わる。床に落ちた靴下は不整地走行なみに厄介な問題だ。靴下問題を解決しなければ実用化は難しい。

 「コンビニ」では商品の棚入れや廃棄、接客、トイレ掃除などを想定。商品棚もロボットも自由に開発できる。ものづくり分野の物流種目が倉庫から店舗までのロボット化、コンビニが店舗作業のロボット化と分けられた。この2種目に参戦した企業は倉庫から店舗まで一貫したシステムを提案できるようになる。

 「公共」では駅や博物館などでの業務を競う。接客や道案内ではコミュニケーション機能、掃除や配送では人が行き交う環境での安全な移動機能が求められる。競技環境はシミュレーションで提供するためAI研究者が参加しやすい。18年はシミュレーション、20年に実機を使った競技を計画する。この機体にソフトバンクの「ペッパー」、AI開発基盤としてIBMの「ワトソン」が挙がっている。検討内容はまだ流動的で、16年内に正式に決めて公募に進む。
日刊工業新聞2016年9月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
介護ロボを開発するメーカーからは「介護・医療」はどこへ行ったのかと疑義が出ています。今回、サービス分野では介護・医療ロボは種目として独立させずに「家庭」や「公共」の中の課題として取り込まれそうです。この「家庭」はどこの家か、健常者でなくても良く、「公共」は病院もあり得るはずです。さらに筋萎縮硬化症(ALS)などの患者会のメンバーには「自宅を実験場にしてでも良いので技術開発を進めて欲しい」という方もいます。モデルとなる部屋を与え、生活支援作業の開発優先順位を決め、技術課題を整理するのは当然として、実際に試せるお宅とユーザーがそろえば共創的にアプリ開発が進むと思います。ユーザーからの感謝の言葉は大会での勝ち負け以上に開発者のモチベーションになります。大会から派生する物語としても魅力的だと思います。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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