ジャパンディスプレイが前期赤字に転落、液晶再編は動きだすか!?
今日、シャープが再生計画を発表。主力行や政府系ファンドの思惑が絡み合う
ジャパンディスプレイが13日発表した2015年3月期連結決算は、当期損益が122億円の赤字(前期は339億円の黒字)に転落した。価格下落の影響などで営業減益になったことに加え、深谷工場(埼玉県深谷市)閉鎖に伴う特別損失の計上も影響した。15年3月期の上期は苦戦したが、下期(14年10月―15年3月)は米アップルなど大口スマートフォンメーカー、中国メーカー向けが伸びた。ただ「ハイビジョン画質製品の価格下落が続いた」(西康宏執行役員)という。
16年3月期業績予想は第1四半期(4―6月)のみ開示した。高機能パネル需要が旺盛で、売上高は前期比91・7%増の2400億円、営業損益は20億円の黒字(前期は126億円の赤字)を確保する見通し。
トップ交代断行
ジャパンディスプレイ(JDI)が、トップ交代に踏み切る。元三洋電機副社長の本間充氏を会長兼最高経営責任者(CEO)に迎えて、有賀修二取締役が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格するトップ人事を6月に断行する。主力のスマートフォン向け中小型液晶パネルの成長を加速させるほか、新たに車載市場を開拓していく。中小型液晶業界では、中国勢、台湾勢が急速に存在感を高めている。30%超のシェアを獲得して寡占状態を築けるか。JDIの経営は新たなステージに入る。
東芝、日立製作所、ソニーの中小型液晶パネル事業が統合し、2012年4月に発足したJDI。初代トップの大塚周一社長は、3社の融合を進め、統合効果を最大限に引き出す事業基盤づくりにまい進してきた。
その歯車は14年夏以降、うまく回り出した感がある。タッチパネル機能を組み込んだ先端パネルを武器にして、中国スマホメーカーとの取引拡大に成功。また米アップルの資金支援を受けて石川県に新工場を建設することも決めた。業績面でも15年3月期は下期にV字回復して、業界では業績の上振れを予測する見方が増えている。
大塚社長は少しずつ勇退の準備を進めてきた。従来はアップルとのビジネスは大塚社長、韓国サムスン電子は有賀取締役の担当だったが、今は有賀取締役がアップルもカバーする。また石川県の新工場計画についても「一歩引いて、部下に対応を任せていた」(業界関係者)という。
大塚氏から社長のバトンを受ける有賀取締役は、エプソン出身の元エンジニア。技術に明るいトップとして、エプソンやソニーの液晶子会社の社長を歴任した。「いすを温めることの少ない行動派」(産業革新機構幹部)で、「投資するかしないか迷ったら、投資するタイプ」(業界関係者)という。
一方、会長職に就く本間氏は、三洋電機で電池事業を育成した。経済産業省関係者は「三洋の電池事業が大きくなったのは、本間氏のマネジメント手腕によるところが大きい」と話す。三洋電機では経営危機の修羅場を経験しており、「今やるべきことは何か、冷静に判断できる」と評価する声も上がる。
今後も中小型液晶パネル市場は拡大が見込まれ、中国、台湾メーカーによる新工場が5カ所以上で計画されている。技術面でも中国、台湾メーカーが猛追しており、現地報道によると台湾メーカーのAUOが、アップルのスマホ「アイフォーン」の新モデルに液晶パネルを供給するという。
調査会社ディスプレイサーチ(東京都中央区)によると14年の中小型液晶パネルのシェアトップ3は韓国・LGディスプレー(18・1%)、JDI(16・0%)、シャープ(15・6%)。一般的に半導体や液晶のような装置産業は、3社による寡占状態に入れば市場が安定し、各社が利益をあげやすくなる。JDIは今の地位を固めるため、シェアを30%程度まで高める必要がある。実現にはアップル、中国スマホメーカーとの取引を拡大できるか、自動車のIT化で伸びが期待される車載ディスプレー市場を開拓できるかがカギを握る。
マネジメント力に長(た)けた本間氏、技術に明るく顧客のニーズ対応力に優れる有賀氏―。両氏のコンビネーションが最大限発揮されれば、勝ち組3社への道が拓ける。
どうなるシャープとの提携?今日、再生計画発表
今日、中期経営計画と再生プランを発表するシャープ。焦点は主力事業ながら収益変動が大きい液晶事業の分社化。他社からの出資受け入れも視野に、意思決定の迅速化と投資力を高めたい狙いもある。出資候補は政府系ファンドの産業革新機構。
シャープは過半の株式を保有し主導権を握り続けたい意向。しかし、革新機構側も過半出資が条件で早期に折り合うのは難しい状況だ。過去に、経産省が旗を振って「日の丸液晶会社」を作ろうとした時、その打診をシャープはあっさり袖にした。今でも経産省や革新機構側には、根強い不信感もある。今日の会見で、シャープの高橋興三社長からどのような意思が示されるか。
16年3月期業績予想は第1四半期(4―6月)のみ開示した。高機能パネル需要が旺盛で、売上高は前期比91・7%増の2400億円、営業損益は20億円の黒字(前期は126億円の赤字)を確保する見通し。
トップ交代断行
ジャパンディスプレイ(JDI)が、トップ交代に踏み切る。元三洋電機副社長の本間充氏を会長兼最高経営責任者(CEO)に迎えて、有賀修二取締役が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格するトップ人事を6月に断行する。主力のスマートフォン向け中小型液晶パネルの成長を加速させるほか、新たに車載市場を開拓していく。中小型液晶業界では、中国勢、台湾勢が急速に存在感を高めている。30%超のシェアを獲得して寡占状態を築けるか。JDIの経営は新たなステージに入る。
東芝、日立製作所、ソニーの中小型液晶パネル事業が統合し、2012年4月に発足したJDI。初代トップの大塚周一社長は、3社の融合を進め、統合効果を最大限に引き出す事業基盤づくりにまい進してきた。
その歯車は14年夏以降、うまく回り出した感がある。タッチパネル機能を組み込んだ先端パネルを武器にして、中国スマホメーカーとの取引拡大に成功。また米アップルの資金支援を受けて石川県に新工場を建設することも決めた。業績面でも15年3月期は下期にV字回復して、業界では業績の上振れを予測する見方が増えている。
大塚社長は少しずつ勇退の準備を進めてきた。従来はアップルとのビジネスは大塚社長、韓国サムスン電子は有賀取締役の担当だったが、今は有賀取締役がアップルもカバーする。また石川県の新工場計画についても「一歩引いて、部下に対応を任せていた」(業界関係者)という。
大塚氏から社長のバトンを受ける有賀取締役は、エプソン出身の元エンジニア。技術に明るいトップとして、エプソンやソニーの液晶子会社の社長を歴任した。「いすを温めることの少ない行動派」(産業革新機構幹部)で、「投資するかしないか迷ったら、投資するタイプ」(業界関係者)という。
一方、会長職に就く本間氏は、三洋電機で電池事業を育成した。経済産業省関係者は「三洋の電池事業が大きくなったのは、本間氏のマネジメント手腕によるところが大きい」と話す。三洋電機では経営危機の修羅場を経験しており、「今やるべきことは何か、冷静に判断できる」と評価する声も上がる。
今後も中小型液晶パネル市場は拡大が見込まれ、中国、台湾メーカーによる新工場が5カ所以上で計画されている。技術面でも中国、台湾メーカーが猛追しており、現地報道によると台湾メーカーのAUOが、アップルのスマホ「アイフォーン」の新モデルに液晶パネルを供給するという。
調査会社ディスプレイサーチ(東京都中央区)によると14年の中小型液晶パネルのシェアトップ3は韓国・LGディスプレー(18・1%)、JDI(16・0%)、シャープ(15・6%)。一般的に半導体や液晶のような装置産業は、3社による寡占状態に入れば市場が安定し、各社が利益をあげやすくなる。JDIは今の地位を固めるため、シェアを30%程度まで高める必要がある。実現にはアップル、中国スマホメーカーとの取引を拡大できるか、自動車のIT化で伸びが期待される車載ディスプレー市場を開拓できるかがカギを握る。
マネジメント力に長(た)けた本間氏、技術に明るく顧客のニーズ対応力に優れる有賀氏―。両氏のコンビネーションが最大限発揮されれば、勝ち組3社への道が拓ける。
どうなるシャープとの提携?今日、再生計画発表
今日、中期経営計画と再生プランを発表するシャープ。焦点は主力事業ながら収益変動が大きい液晶事業の分社化。他社からの出資受け入れも視野に、意思決定の迅速化と投資力を高めたい狙いもある。出資候補は政府系ファンドの産業革新機構。
シャープは過半の株式を保有し主導権を握り続けたい意向。しかし、革新機構側も過半出資が条件で早期に折り合うのは難しい状況だ。過去に、経産省が旗を振って「日の丸液晶会社」を作ろうとした時、その打診をシャープはあっさり袖にした。今でも経産省や革新機構側には、根強い不信感もある。今日の会見で、シャープの高橋興三社長からどのような意思が示されるか。
2015年4月27日/05月14日 電機・電子部品・情報・通信面に加筆