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日銀とFRBはいつ動く?今日からそれぞれ金融政策会合

日本は「追加緩和」後退、米国は利上げ先送り濃厚。市場の混乱限定的
日銀とFRBはいつ動く?今日からそれぞれ金融政策会合

日銀・黒田総裁が「サプライズ」重視を改めるかが注目される

 日銀の金融政策決定会合と、米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦市場公開委員会(FOMC)が20―21日に開かれる。FRBは各種経済指標が力強さに欠ける上に大統領選を控え、9月の利上げを見送る公算が大きい。日銀も3年半の金融政策を振り返る「総括的検証」を公表するが、黒田東彦総裁の月初の講演以降に急速に追加緩和期待はしぼんでいる。足元の円高圧力は強まるが、マーケットへの影響は限定的になる可能性が高い。

 日程も影響しそうだ。日米、いずれも20―21日の開催で日銀が政策発表する段階では米国の動向は不透明。浜田宏一内閣官房参与がFOMCの決定前の追加緩和を控えるべきだとの発言も手伝い、緩和に踏み切るとの主張は少数派になっている。

検証結果がどうであろうと、矢継ぎ早に追加緩和をしなければならないほど経済環境は切迫していない。検証結果のみを発表して、実際の政策変更は物価の見通しを公表する次回会合(10月31日―11月1日)で実施するのが現実的だろう。

 例え政策変更に踏み切ったとしても、「国債買い入れの年限の調整のみ」の可能性が高い。長期、超長期国債の金利低下を受け、利回り曲線はフラット化している。金融機関の収益が圧迫されている状態だ。買い入れ国債の平均残存期間を短くすることで、利回り曲線の長短金利差を広げる狙いだ。


「対話が少しずつ進んでいる」(地銀協会長)


 追加緩和を見送ったところで、マーケットの混乱は限定的だろう。市場はもはや金融政策一本足での限界を認識している。現実的にハードルが高い外債購入が緩和の選択肢として浮上するほど、日銀の手持ちのカードが少ないことも理解している。

 もちろん、市場ではマイナス金利の深掘りも一部でも盛り込まれている。実際に追加緩和を見送ればドル円相場で円安圧力は弱まるが、「1ドル=100円を割り込むようなことないだろう」(市場関係者)。

 今後は黒田総裁が「サプライズ」を重視した政策変更の手法を改めるかが注目される。全国地方銀行協会(地銀協)の中西勝則会長(静岡銀行頭取)は「黒田総裁の講演からは(金融機関の苦境を)真摯(しんし)に受け止めていただいていると感じている。対話が少しずつ進んでいる」と述べる。今回、追加緩和を見送れば、「サプライズ型」から「対話型」への転換の第一歩になる。

金利高止まり、国際商品に下落圧力



 FRBが9月の追加利上げを見送り、日銀が追加緩和を決めても、国際商品(コモディティー)価格が上昇するとは限らない、との見方が出ている。金、銀などの貴金属、銅、アルミニウムといった非鉄金属、原油などの国際商品は、需給などの独自材料より、金融市場の動きに左右される傾向が強かった。

 通常、主要国の中央銀行が緩和的な政策をとれば、投資資金が流入し、相場は上げやすい。ただ、市場では金融緩和策限界論が浮上している。

 資源の価格リスクマネジメントコンサルタント会社、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は、「世界的に過剰な金融緩和状態を見直す動きが強まっており、商品固有の需給環境が価格に与える影響が以前より増している」と指摘する。

 相場が転換しつつあると市場に意識されたのが、8日の欧州中央銀行(ECB)理事会だ。追加緩和見送りの結果は市場の想定の範囲内だったものの、量的緩和終了の時期を延長する案について、「理事会で議論の対象にすらならなかった」とドラギ総裁が発言、金融緩和に対する失望が市場で広がった。

 その後、日米欧で長期金利上昇が目立った。日銀が年金資金の運用利回り改善などのため、満期までの期間が長い国債の買い入れペースを緩めるとの見方が浮上している。

 国債相場が下落するとの観測が強まり、長期金利は上昇傾向が続いている。ドイツでは、英国の欧州連合(EU)離脱決定以降、マイナス圏で推移してきた10年債利回りがプラス圏に浮上している。

 また、米国でも9月は見送られても年内には追加利上げに踏み切るとの見方が根強く、金利に上昇圧力が強まっている。金利上昇は、保有していても金利の付かない資産である金など国際商品の売り材料となりやすい。

 また、米長期金利上昇を背景に外国為替市場でドル高が進行しやすい。ドルが対ユーロなどで上昇すると、原油、非鉄金属、貴金属などドル建てで取引される国際商品相場の割高感が高まり、圧迫材料となる。今後、金融緩和策の限界が市場で意識され、金利が高止まれば価格下落圧力が強まる可能性がある。
(文=栗下直也、関口和利、杉浦武士)

《私はこう見る》「米12月利上げで円高材料に」》


ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミスト・矢嶋康次氏

 FRBの9月利上げはないだろう。8月の各種の経済指標をみても利上げをできる状況ではない。先送りとなるが、年内利上げの可能性はまだある。

 日銀の金融政策では、総括的な検証がポイントとなる。物価上昇率2%の早期達成はできなかったが、目標に向けてさらに努力するという方向性になれば、追加緩和の可能性はある。マイナス金利の深掘りや国債買い入れ策の変更などを組み合わせてくるのではないか。

 ただ、マイナス金利の深掘りにしろ、円安へ動くとも思えず、日銀の政策が為替に与える影響の評価は難しい。むしろ、米国の12月利上げが市場で意識されているため、円高の材料になる可能性が残っているといえる。
日刊工業新聞2016年9月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
黒田包囲網が出来つつある。緩みきった金融政策をそのまま後任にバトンタッチするのは無責任。総括的検証も必要だが、まずデフレギャップの解消を。

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