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まだ間に合う!?大手電機が基礎研究でようやく外部連携

IoTやAIでオープンイノベーション。米独ではすでにビジネスフェーズに
 日立製作所NEC三菱電機など電機大手は、長期的に取り組む基礎研究について、自前主義からの脱却を鮮明にする。日立は大学と社会課題を解決する研究に着手し、NECは脳を模倣した人工知能(AI)の研究開発で大学などと連携する。IoT(モノのインターネット)やAIなど新技術の普及を見すえ、企業はオープンイノベーションにかじを切ることで、研究手法の多様化と成果の迅速化を狙う。

 日立は「超スマート社会」に向けた課題解決に向け、基礎研究センタの約3分の1の人員を東京大学京都大学、北海道大学に常駐させた。これまでの産学連携は特定のテーマに限っていたが、今後は各大学に設けた「共同ラボ」で、社会で解決すべきテーマを大学と共に掘り起こす。

 NECは2018年度までに、オープンイノベーションへの投資額を15年度比で倍増させる。主力テーマに据えるAIや脳型コンピューティングの研究で東大や大阪大学産業技術総合研究所(産総研)と連携し、自社のスター研究者を各機関に送り込む。従来の産学連携の100倍近い数億円規模の資金を投じる。

 三菱電は長期視点に立ったAIやIoTの関連テーマを強化する。大学との共同研究の件数を16年度に前年度比約1・5倍に増やし、特に海外とのオープンイノベーションを拡充する。

 富士通研究所(川崎市中原区)はAIとセキュリティーの2大研究センターを新設した。数十年ぶりにフェローとして大学から専門家を招いた。

 企業はこれまで、特に5年先、10年先のビジネスを見すえた基礎研究については、情報を社外に公開せず、社内でテーマを温めながら長期的に取り組む傾向にあった。しかし、社会課題の複雑化やIoTなど新技術の登場、製品開発の迅速化などを背景に、産学の知を結集して取り組む方針に各社が転換する。

 研究人材を多様化する意味でも大学と組むメリットは大きい。社会課題解決や、人間と親和性の高いAIの開発などを目指して、従来の理工系分野だけではなく、数学など純粋理学や人文社会系の専門家との連携を広げる狙いもある。
日刊工業新聞2016年9月19日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 ようやくというかなんというか。もちろんこれまでにも基礎研究は大学と共同で進めてきた企業も多かったが、ポイントは自前主義からの脱却というところだろう。もはや自社だけでは新領域の研究開発をやりきれないとの判断がようやく認識され始めたということ。米国やドイツに遅れること数年。  ただし、ドイツのアーヘン工科大学などで取り組んでいるのはもはや基礎研究などではなく、実用可能性を高める基礎技術の応用開発領域であり、IoTとデータドリブンなものづくり、そしてそれらをAIや分析技術を用いて高度にシミュレータブルなビジネスを作り上げ始めている。  基礎研究もよいが、ビジネスとしてのイグジットを意識しない研究やスキームであればさらに競争力の差は開く。そこまで意識した取り組みとなることに期待したい。

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