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ぜんそくなど重症アレルギー疾患の発症メカニズム解明

千葉大、エーザイとの共同研究でヒト型抗体の作成に成功
 千葉大学大学院医学研究院の中山俊憲教授らは、ぜんそくなどの重症アレルギー疾患に関わるたんぱく質を特定し、発症のメカニズムを解明した。このたんぱく質に対する抗体を投与することで、アレルギー疾患を抑える新しい治療法の確立を目指す。すでにエーザイとの共同研究でヒト型抗体の作成に成功。10年以内の実用化を目指す。

 ぜんそくなどのアレルギー疾患は、CD69分子を発現した病原性免疫細胞が肺などの組織に達して発症することが知られている。だが、免疫細胞が血管外に出る仕組みは解明されていなかった。中山教授らは、CD69に選択的に結合するたんぱく質「Myl9/12」が、免疫細胞の血管外への移動を手助けすることを突き止めた。

 Myl9/12は血管内側に付着し、網目状構造を作る。ここにCD69分子が結合、免疫細胞が血管外へ放出される。本来はMyl9/12は免疫反応の進行とともに減るが、ぜんそく患者は組織の炎症に伴い、継続して放出される。その結果、病原性免疫細胞を血管外へ出し続け、炎症疾患の慢性化や重症化につながるとされる。

 CD69分子とMyl9/12の結合を阻害する抗体が投与できれば発症を抑えられ、新しい治療法になると期待されている。現在、第1相臨床試験開始に向けた手続きをしており、5年後をめどに第2相に入る計画だ。

 ぜんそくの他にもリウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患も同様のメカニズムで発症すると考えられ、これらに対する治療薬の研究も進める。

 

日刊工業新聞2016年9月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この成果は米学術誌サイエンスイムノロジー電子版に掲載されています。

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