企業は女性社員の健康対策に何ができるのか。ヤフーは79%が不安に感じる
「相談員」の設置やバイエル薬品は高校生に啓発イベント
女性の健康に関する国の認識や支援は必ずしも十分とはいえない。一方、企業では女性社員の健康問題を受け止め、働きやすい環境を模索する動きが少しずつ出てきている。
「将来も働き続けられるのか、という不安を抱えていたのが印象的だった」。総合情報サイト大手のヤフーで健康業務推進主管の小野寺麻未氏はこう話す。
2014年12月に社内で女性社員へアンケートをしたところ、79%が自身の健康について不安があると回答したという。不安の内容は更年期や乳がんなどだった。同社は社員の平均年齢が16年6月時点で35・2歳。比較的若い会社だが、健康を気にしている女性はかなり多いと言える。
ただ女性は、こうした話を打ち明けづらいものだ。そこで同社は、「健康相談員」という仕組みを設けた。健康関連の知識を体系的に学んだ社員が相談員となり、一般の女性社員から悩みを聞く。
男性上司からも女性部下の健康に関する相談を受け付ける。同社には女性の産業医もいるが、「相談員の方が身近に感じてもらえる」(西知之健康推進センター室長)。
他企業を支援するビジネスも出てきた。三菱総合研究所(東京都千代田区)は、女性の健康に関する情報提供サービス「職場de健康エール」を試行している。
更年期や周産期をテーマとした研修を展開し、受講者の知識や意識の変化を見える化する。17年度中の事業化を目指している。
同社によると研修を受けた女性の反応は、「管理職手前の年代からは多く質問をもらったが、新入社員はいまひとつだった」(前田由美主席研究員)。一般的に言えば若い世代では更年期や周産期の問題が顕在化していないことが多く、相対的に健康への関心が低くても不思議ではない。
そこで、学生への啓発活動の充実を図る動きもある。バイエル薬品(大阪市北区)は高校生に女性の健康関連の知識を身につけてもらう「かがやきスクール」を14年に開始。16年3月までに約7500人が受講した。同社は月経困難症治療剤や経口避妊薬を手がけており、婦人科疾患の知識を普及させることで医療機関の受診や薬の処方につながるとの計算もあるとみられる。
16年8月に東京都世田谷区で開催したシンポジウムでは、男子高校生も交え、月経や妊娠・出産に関する話し合いが行われた。男子の一人が「(体調の問題に悩む)女性をさりげなくフォローするにはどうしたら良いか」と質問し、講師の女性産婦人科医が「こういう人を上司に持ちたい」と返して会場を沸かせる場面があった。
企業でも男性が女性の健康について知ることは重要だ。一方で女性側の努力も求められる。「男性上司にこうなってほしい、と考えすぎると配属の当たり外れで満足度が変わってしまう。どんな性格の上司でもある程度対処できる知識や、(コミュニケーションの)技術が必要」(ヤフーの小野寺氏)。男女の相互理解を進めることが、結果として女性活躍の推進につながる。
活躍!活躍!って言うけれど…女性の健康は気遣われず(上)
「将来も働き続けられるのか、という不安を抱えていたのが印象的だった」。総合情報サイト大手のヤフーで健康業務推進主管の小野寺麻未氏はこう話す。
2014年12月に社内で女性社員へアンケートをしたところ、79%が自身の健康について不安があると回答したという。不安の内容は更年期や乳がんなどだった。同社は社員の平均年齢が16年6月時点で35・2歳。比較的若い会社だが、健康を気にしている女性はかなり多いと言える。
ただ女性は、こうした話を打ち明けづらいものだ。そこで同社は、「健康相談員」という仕組みを設けた。健康関連の知識を体系的に学んだ社員が相談員となり、一般の女性社員から悩みを聞く。
男性上司からも女性部下の健康に関する相談を受け付ける。同社には女性の産業医もいるが、「相談員の方が身近に感じてもらえる」(西知之健康推進センター室長)。
他企業を支援するビジネスも出てきた。三菱総合研究所(東京都千代田区)は、女性の健康に関する情報提供サービス「職場de健康エール」を試行している。
更年期や周産期をテーマとした研修を展開し、受講者の知識や意識の変化を見える化する。17年度中の事業化を目指している。
同社によると研修を受けた女性の反応は、「管理職手前の年代からは多く質問をもらったが、新入社員はいまひとつだった」(前田由美主席研究員)。一般的に言えば若い世代では更年期や周産期の問題が顕在化していないことが多く、相対的に健康への関心が低くても不思議ではない。
女性側の努力も必要
そこで、学生への啓発活動の充実を図る動きもある。バイエル薬品(大阪市北区)は高校生に女性の健康関連の知識を身につけてもらう「かがやきスクール」を14年に開始。16年3月までに約7500人が受講した。同社は月経困難症治療剤や経口避妊薬を手がけており、婦人科疾患の知識を普及させることで医療機関の受診や薬の処方につながるとの計算もあるとみられる。
16年8月に東京都世田谷区で開催したシンポジウムでは、男子高校生も交え、月経や妊娠・出産に関する話し合いが行われた。男子の一人が「(体調の問題に悩む)女性をさりげなくフォローするにはどうしたら良いか」と質問し、講師の女性産婦人科医が「こういう人を上司に持ちたい」と返して会場を沸かせる場面があった。
企業でも男性が女性の健康について知ることは重要だ。一方で女性側の努力も求められる。「男性上司にこうなってほしい、と考えすぎると配属の当たり外れで満足度が変わってしまう。どんな性格の上司でもある程度対処できる知識や、(コミュニケーションの)技術が必要」(ヤフーの小野寺氏)。男女の相互理解を進めることが、結果として女性活躍の推進につながる。
活躍!活躍!って言うけれど…女性の健康は気遣われず(上)
日刊工業新聞2016年9月15日