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絶対に負けられない戦いが“お弁当ロボット”にある

2020年開催予定の国際ロボット競技大会、「Bento」は日本が誇る文化に?
絶対に負けられない戦いが“お弁当ロボット”にある

双腕ロボット「ネクステージによる製品組み立てデモを披露」

 2020年開催予定の国際ロボット競技大会では「ものづくり」と「サービス」、「災害」の3分野でロボットが競われる。ものづくり分野は「製品組立・分解」と「物流」、「食品産業」の3種目。どれも産業用ロボットの技術が核となる。産ロボは日本の製造業を支えてきた。これからもリードし続けなければならない分野だ。絶対に負けられない戦いがここにある。

 ものづくり分野では将来のビジョンを明確に設定した。20年には物体認識技術が高度化し、多くの日用品や食材が認識できるようになる。ロボットハンドも進化し、柔らかく不定形な食品、食材も持てるようになる。

 30年には多くの作業ができる汎用的なハンドが開発される。人工知能(AI)の進化で、人間に指示するのと同程度の指示でロボットが動作を生成し、学習して作業を洗練させるといった具合だ。このビジョンの実現にむけて競技設計を進めている。

 「製品組立・分解」種目では電気製品などの組み立てを担う多能工なロボットを競う。18年のプレ大会では事前提供した製品と当日追加のサプライズ品を一つずつ組み立て、20年の本大会ではより工数を増やし、傷や汚れの検査も同時に行う。産業技術総合研究所の横井一仁知能システム研究部門長は「20年にはロボットのチョコ停をネットワーク越しに復旧させる形式にしたい」という。

 「物流」では倉庫から店舗などの拠点間配送を想定。棚からの商品ピッキングと箱詰めが課題になる。ロボットに事前登録できる定番商品が約100種とサプライズ品が数十種。配送箱への詰め方や、商品の重さやつぶれやすさを配慮していれば得点が伸びる。20年には間違った棚に置かれた商品を正しい場所に戻すなど課題を難しくする。

 「食品産業」では弁当がテーマだ。18年は難易度別に3種類の弁当を用意する。参加者が弁当を選び、五つの食品サンプルを詰めて完成させる。20年は弁当の種類は10種、実際の食材を使って弁当を作る。審査方法は作業速度や精度に加えて見栄えも評価できないかと検討している。20年は弁当のデザインを公募したい考えだ。

 3種目とも機体を自由に選べるため、ロボットメーカーやシステムインテグレーターのサポート力が完成度に影響する。また「製品組立・分解」や「物流」ではメーカーから実製品のデータを募集する。大学研究者からは「現場を知りたい」という要望が挙がっている。競技と現場の違いを理解した上で、現場で使える技術を開発し大会に臨むためだ。

 現場で動いているカラクリとロボットの融合など考慮すべき項目は多い。現場やデータの提供企業は大会の恩恵を最大限受けるだろう。種目の内容は16年内に正式に決めて公募する。参加チームが集まらなければ種目を再編し競技内容も修正する。
日刊工業新聞2016年9月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
2020年の本大会ではロボットがキャラ弁を作ることになりそうです。弁当「Bento」は日本が誇る文化らしく、おかずのバリエーションの豊かさ、弁当箱「Bento Box」へのこだわりはすごいそうです。オムライスでピカチュウやソーセージでダグドリオをロボットが作っている姿を、愛らしいと受け取ってもらえれば嬉しいです。できたキャラ弁は工業製品的な弁当でなく、作り手の温かみのようなプレミアがつけばいいですね。そのとき初めて食品加工装置でなく、お弁当ロボットと呼んでもらえるのかもしれません。

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