NECと富士通「つながる工場」で激突!制御システムを持つ日立はどうする?

NECは3000人規模の業界横断組織作りへ。国内IT大手で連携ができなければ米独に遅れも

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 NECはモノのインターネット(IoT)で工場を丸ごと“見える化”して効率を高める「スマートファクトリー」の構築支援に乗り出す。6月に関連ソリューション群を打ち出す。これを機に電機・機械など554社・約1400人を会員とする業界横断交流組織「ものづくり共創・研究グループ」を発展させ、IoT活用を後押しする団体を立ち上げる。IoT対応では富士通がファナックなどロボット業界との連携に乗り出しており、情報通信技術(ICT)2社のつば競り合いが熱気を帯びてきた。

 NECも富士通も制御システムは持っておらず、中立的な立ち位置でのソリューション提案が可能。通信系に強いNECはつながる仕組みで差別化、富士通はロボット統合などで制御システムの中核を押さえる戦略。

 NECが提唱するスマートファクトリーは、ドイツが国策として進める「インダストリー4・0(第4次製造業革命)」の概念に沿って、“つながる工場(工場ICT)”を具現化する。工場内の制御システムはもとより、工場間や部材メーカー、顧客とも情報共有することで、需要変動や複雑な状況変化に即応できる体制作りを支援する。

 中核となるソリューション群では制御ネットワーク向けデータ収集インターフェースや設備の稼働をクラウド上でリアルタイムに分析する仕組みなどをそろえ、NECが描くインダストリー4・0像を打ち出す。

 ものづくり共創・研究グループはNECが事務局となり2013年後半に発足。メンバーは企業の工場経営幹部や調達・生産担当、改革推進者など。同じ悩みを持つ者同士が学びの場として役割を担っている。同グループ内には共通課題を検討する分科会があり、その活動を発展させ、IoT活用の標準化などにも取り組む。日本インダストリアル・エンジニアリング協会(東京都港区)とも連携する計画。「研究グループの会員数を早急に3000人に倍増させる」(NEC幹部)方針。
(日刊工業新聞2015年05月14日1面)

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 富士通は生産活動のあらゆるデータをつなぎ、人とロボットなどの機械が高次元で協調できる次世代モノづくり環境の構築に乗り出す。推進母体として4月に「ものづくりソリューション事業推進室」を20―30人規模で設立する。社内実践を通して参照モデルを作り、それを反映した新しいソリューションを10月から順次投入する。ファナックなどの産業用ロボットメーカーとも連携し、異なるロボットの組み合わせを最適化するインテグレーション事業にも進出する。

 富士通は今後3年間で、モノづくりソリューション全体で売上高2000億円を見込む。このうちロボットインテグレーションなど、新たな取り組みで500億円を想定する。「ドイツは国を挙げてインダストリー4・0(第4次製造業革命)を推進している。我々もオールジャパンで取り組まないといけない」(花田吉彦執行役員常務)という。

 社内実践では“自律型製造システム”に焦点を当て、ロボットが作業を学習して適切な動作を行う自律・協調制御や、工程変更に迅速に対応して制御プログラムを自動生成する仕組みなどを開発する。このほか、モノのインターネット(IoT)を活用した障害予兆検知や工場設備の監視といった仮想・現実を問わず、モノづくりに関わるさまざまな情報を統合的に扱う。工場間の意思疎通を支援する「仮想大部屋技術」なども社内で実践する。

 ロボット業界との連携ではメーカーごとに異なるロボットの制御プログラム言語を、利用者から見て同じように扱えるようにして、ロボット利用を中堅・中小企業にも広げる。
(日刊工業新聞2015年03月09日 電機・電子部品・情報・通信面)

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 日立製作所で報通信事業を担当する斉藤裕執行役副社長は、日本がインダストリー4・0で存在感を発揮するための最大の課題を、1つの業界で一定規模の企業が複数存在し、連携が難しい点を上げる。

 ―IoTを使った新しいモノづくりの一番のインパクトは何ですか。
 「モノづくりのやり方がガラリと変わる。工場間、サプライヤー、そして消費者までネットワークでつなぎ情報をリアルタイムに共有化する。これにより製造業全体が、あたかも一つのシステムのようになり、最適に製品をつくれるようになる。人の作業も含めデータ化していけば、熟練工のノウハウや知見をネットワークを介して簡単に利用できるようになる」

 ―どんなメリットがありますか。
 「工場単位で最適化を図っている現状と比べ、生産カイゼンのスピードが格段に上がる。生産工程を見える化できるので不具合への対応力もあがるだろう。また共同研究の環境も向上するので、技術革新が起きやすくなる効果も期待できる」

 ―ドイツのI4・0、米GEが主導する「インダストリアル・インターネット」に比べ、日本の取り組みは遅れています。
 「非常に危機感を持っている。米アップルの音楽配信プラットフォーム『iTunes』を思い出してほしい。個々のレコード会社ごとに存在していた楽曲を集約させエコシステム(ビジネスの生態系)を形成しており、その頂点に立つアップルは、主導権を握り高収益を実現している。新産業革命により製造業でも同様のことが起こり得る。独米はこのプラットフォームを巡る争いを始めた。乗り遅れれば、日本の技術や製品は、ワンオブゼムに成り下がってしまう」

 ―日本は巻き返せますか。
 「当社以外にも情報通信系では富士通、NEC、生産現場の制御システム系では東芝、三菱電機といった競争力のある企業がそろっており、連携すれば素晴らしいシステムができる素地はある。政府に旗振り役を期待したい。業界や企業をまたぐ形で、ベースとなる仕組みを構築するための実働組織をつくってほしい。当社も協力は惜しまない」

 ―まず先に新興国で新産業革命が起きる可能性があります。
 「巨大なインフラ投資が必要な固定電話より先に携帯電話が普及した新興国は多い。同様に過去のしがらみがない分、一気にIoTを使ったモノづくりが立ち上がるかもしれない。ドイツのI4・0は20年の取り組みだが、新興国では5―10年で実現できてしまうかもしれない。それを日本に持ち込まれたら脅威だ」
 
 

日刊工業新聞2015年04月15日 1面一部修正

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明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

GEとIBM、シーメンスとSAPががっちり組めば、一通りのデファクトなり標準規格ができてしまいそう。今はドイツと米国が互いに主導権争いをしているように映るが、仮に両者が組んだら日本の出番は無くなる恐れがある。

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